2025年8月10日日曜日

江漢西遊日記五 その15

P15 東京国立博物館蔵

(読み)

さて長 﨑 より此 邊(ヘン)能風 土三 十  二三 度

さてながさきよりこの  へん のふうどさんじゅうにさんど


能処  ニして尤  モ海 邊故 夏 ハあ川く冬 ハ至

のところにしてもっともうみべゆえなつはあつくふゆはいたっ


て暖   ニして雪 霜 希(マレ)なり家 \/尓タイ\/

てあたたかにしてゆきしも  まれ なりいえいえにだいだい


能樹(キ)を植(ウユ)恒 ニ酢ニ用 ユザボンとて九年 母ニ

の  き を  うゆ つねにすにもちゆざぼんとてくねんぼに


十  倍 能物 辻 \/尓賣ル大 根 太 ク短  シケラ能

じゅうばいのものつじつじにうるだいこんふとくみじかしけらの


尾と云 亦 ほそ大 根 白 赤 能二品 サツマ芋

おというまたほそだいこんしろあかのにしなさつまいも


も同 し蕪 亦 同 し茶 釜 なし土瓶(ヒン)ニて

もおなじかぶまたおなじちゃがまなしど  びん にて


茶 を煎(センス)口 取 ボール黒 砂糖(トウ)或  ハ蕪(カブ)を酒

ちゃを  せんず くちとりぼーるくろざ  とう あるいは  かぶ をさけ


醤  油ニ漬(ツケル)婦人 生  涯 眉(マユ)を剃(ソラ)春゛手能指 ニ

しょうゆに  つける ふじんしょうがい  まゆ を  そら ず てのゆびに


金 輪を者める十  月 より此 方 時雨 とて大 雨

かなわをはめるじゅうがつよりこのほうしぐれとておおあめ

(大意)

(補足)

「風土」「土瓶」、「土」のくずし字に注意です。

「三十二三度」、この「度」はなんでしょうか?長崎・小串の直線距離は約36kmです。「里」や「町」の間違いではありませんし、経度でもなさそう。さて?

「九年母」、『くねんぼ。ミカン科の常緑低木。インドシナ原産。葉はミカンに似るがやや大きい。果実は球形で秋にオレンジ色に熟す。果皮は厚く,果肉は香りと酸味が強い。香橘(こうきつ)。季秋』

 当時の地元の果物や野菜の様子がわかっておもしろい、でもそれほど変わってはなさそうです。

「口取」、『くちとり 【口取り】①酒や茶などに添えて供する食べ物。㋐ 「口取り肴(ざかな)」の略。㋑ 「口取り菓子」の略。』

 江戸時代、女の人は結婚すると眉を剃りお歯黒でとよくいわれますが、そうでもないことがわかります。また「手能指ニ金輪を者める」のはきっと南蛮人の風習を取り入れたでしょうか。またはキリシタン信仰からのものでしょうか。

 フランス革命の遠因は気象異常とはよくいわれますが、この18世紀後半は地球上いたるところで天候不順だったようで、ここ九州でも南国で雪や霜があったことがわかります。

 

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