P21 東京国立博物館蔵
(読み)
其 主 人 雅人 なり其 友 一 両 輩 来ル各 々
そのしゅじんがじんなりそのともいちりょうはいくるおのおの
風 流 あり此 日共 尓浅 現 の山 に登 ル大 松 の
ふうりゅうありこのひともにせんげんのやまにのぼるおおまつの
根を枕 ニして伏ス目 下ニ阿部川 を見向 尓
ねをまくらにしてふすがんかにあべがわをみむこうに
伊豆の山 \/を望 ミ夫 より山 を下 リて游(ユウ)
いずのやまやまをのぞみそれよりやまをくだりて ゆう
亭 アリ魚 を售(ウ)る家 ナリ酒 肴 ヲ出して
ていありさかなを う るいえなりしゅこうをだして
日暮 尓帰 ル
ひぐれにかえる
十 四 日
じゅうよっか
終 日 大 雨 近 所 ノ者 参 ル昼 比 よりして
しゅうじつおおあめきんじょのものまいるひるごろよりして
大 田原 侯 ヘ参 ル三 加番 巨勢ト云 方 客 ナリ
おおたわらこうへまいるさんかばんこせというかたきゃくなり
席 画を認 ム夜 ノ九 ツ時 ニ帰 ル
せきがをしたたむよるのここのつどきにかえる
十 五日 天 氣阿部川 漲 ル河 留(トマ)ル白 川 越
じゅうごにちてんきあべがわみなぎるかわ とま るしらかわえっ
(大意)
そこの主人は書画を好むようだ。その友人の一両さんもやって来た。お二人共に風流。
この日、近くの浅間山に登り、大きな松の根方でゴロンと横になった。眼下に安倍川が見え、その向こうには伊豆の山々が望める。
下山して、魚を売る店があったので一杯やって日暮れに帰った。
5月14日(西暦6月17日)
終日大雨。近所の者が使いで来て昼頃大田原侯のもとへ出かけた。
三加番の巨勢という客がいて、席画を認めた。
殿様も客人もずいぶんと喜ばれたようで、そうすると江漢さんはサービス精神大発揮するタチの人なので、おおはりきりしたようだ。夜遅くまで何枚も描いたのかもしれない。
江漢さんいたく満足して、夜の9時(午前零時)に帰宅した。
5月15日
大雨はあがって晴れた。阿部川は荒れ狂っていて渡れない。
(補足)
「主人」、「主」のくずし字がわかりにくい。「丶」+「王」なので、「王」のくずし字「己」になっています。
「雅人」、漢字のみたままの意味。『がじん【雅人】風流な人。風雅を解する人。みやびお』
「枕」のくずし字が読めません。右側の旁の部品が「む」ではないけど、そんな感じ。
「售」、見たこともない漢字。
「日暮」、この日記によく出てきます。「暮」のくずし字は「苦」に似た感じ。
「阿部川」、安倍川。この地図の中央にあります。御城はそのすぐ脇。
日記もこのあたりまで読みすすめてくると、江漢さんの字もくずし字にも慣れてきました。
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