2024年10月1日火曜日

江戸生艶氣樺焼 その41

P22P23 東京都立中央図書館蔵

(読み)

(P22)

ふ多り可゛

ふたりが


志゛せいの

じ せいの


本つくハ

ほっくは


春りもの二

すりものに


して

して


中 の丁  へ

なかのちょうへ


く者゛

くば


らせる

らせる


花らん可゛

からんが


(P23)

かい多者すのゑを

かいたはすのえを


大 本゛うしよへから

おおぼ うしょへから


ずりとハ

ずりとは


いゝ

いい


於保し

おぼし


めし

めし


つき多゛

つきだ


(P22)

王きさしハ者く於き二

わきざしははくおきに


あつらへ

あつらえ


まし多

ました

(大意)

 二人の辞世の発句は摺物にして中ノ町(の茶屋)へくばらせる。

志庵「花藍(からん)が描いた蓮の画を大奉書へ空摺りとは、いい思いつきだ」

喜之介「脇差しは箔置(銀箔を置いた木刀)にしておきました」

(補足)

「花らん」、『きたおしげまさ きたを―【北尾重政】[1739〜1820]江戸中・後期の浮世絵師。独学で一家をなす。錦絵の美人画をよくし,独自の画風を完成。北尾派の祖。また,能書家でもあった』の俳名。門人に北尾政美や北尾政演((まさのぶ)京傳自身)。

「者すのゑ」、蓮の画は現在でも法事や追悼にはつきもの。ここではまさに一蓮托生、二人の気持ち。

「大本゛うしよ」、『ほうしょがみ【奉書紙】〔多く奉書に用いたことから〕

上質の楮(こうぞ)で漉(す)いた,純白でしわのないきめの美しい和紙。杉原紙に似るが,やや厚手で簾目がある。越前奉書が有名。ほうしょ』の大判。

「からずり」、『からずり【空摺り】

浮世絵版画などで,凸版に絵の具を塗らず,刷り圧だけで,紙面に凹凸模様を作り出す技法。着物の文様などを無色の凹線で表すのに用いた』。今で言うエンボス加工のこと。

 わたしの手持ちの錦絵などにもあって、正面からみると柄にしか見えないものが、斜め方向からの光で見てみると凹凸が浮き出て、画が立体的になり見事です。

 この黄表紙の作者も画も北尾政演(まさのぶ)、つまり山東京傳です。この場面、京傳は微に入り細に入り、気のすむまで描きまくっています。花魁浮名はもちろんのこと、禿二人も手抜き一切なし、見事です。

 京傳は「吉原傾城 新美人合自筆鏡(よしわらけいせい しんびじんあわせじひつかがみ)」という題名通りの錦絵集(天明4年/1784)があって、ここの画に描かれている花魁自身が白居易の詩や唐詩選の一節を自筆でその見事な筆をふるっています。どれも息を呑む美しさであります。

 

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