2024年10月12日土曜日

江戸生艶氣樺焼 その52

P30 東京都立中央図書館蔵

P30 個人蔵

(読み)

ゑん二郎 ちやうと

えんじろうちょうど


かん

かん


どう

どう



日のべ

ひのべ


きれ

きれ


けれ

けれ



こり\/としてうちへ可へりてミれバ

ころごろとしてうちへかえりてみれば


ゆ可う二三めぐり尓て者可゛れ多る

いこうにみめぐりにてはが れたる


小袖

こそで


可けてあるゆへふしぎ尓於もう於り可ら一 まより

かけてあるゆえふしぎにおもうおりからひとまより


於や弥二ゑもん者゛んとう候  兵へ多ちいでい个ん春る

おややじえもんば んとうそうろべえたちいでいけんする


ゑん二郎 ハ者じめてよの中 をあきらめ本んとう

えんじろうははじめてよのなかをあきらめほんとう


のひとゝ名りうき奈もおとこの王るいも

のひととなりうきなもおとこのわるいも


ふせ うして本可へゆくきも奈くふう婦と奈り

ふしょうしてほかへゆくきもなくふうふとなり

(大意)

 艶二郎はちょうど勘当の日延もきれたので、さんざんな気分で家へ帰ってみると、衣桁に三囲(神社)で脱がされ奪い取られた小袖がかけてあるので、不思議におもっていると、隣の部屋より親の弥二右衛門と番頭の候兵衛が出てきて、意見をした。

 艶二郎ははじめて世の中のことがはっきりわかり、真面目な人となり、浮名も男(艶二郎)のぶさいく(団子っぱな)は我慢してほかへ嫁く気もなく夫婦となった。

(補足)

「あきらめ」、『あきら・める 4【明らめる】

① 物事の事情・理由をあきらかにする。「創造の神秘を―・めて見なさい」〈肖像画四迷〉

② 心をあかるくする。心を晴らす。「陸奥(みちのく)の小田なる山に金(くがね)ありと申(もう)したまへれ御心を―・め給ひ」〈万葉集4094〉』。「諦める」ではない。

「ふせうして」、『ふしょう ―しやう【不請】

③ 不満足であるが,我慢すること。辛抱すること。「何卒私の心をも察して―してお呉なはい」〈人情本・春色梅美婦禰5〉』

 艶二郎が亀のようになってかぶっているのは例の毛氈、この「毛氈をかぶる」は辞書で調べると『① 〔歌舞伎で,死人になった役者を毛氈で隠し舞台からおろしたところから〕しくじる。放蕩などをして主家や親から追い出される。「親玉へ知れると―・る出入だ」〈浄瑠璃・神霊矢口渡〉② 〔遊女が見世に出ている時,毛氈を敷いたことから〕女郎買いをして金を使う。「それ毛氈かぶるが放蕩息子(どらむすこ)」〈黄表紙・稗史億説年代記〉』とあって、ここでは①の意で、艶二郎の色男ぶる悪企てすべてがしくじったことを示しているとありました。

 辞書にものっているくらいの事柄ですが、何も知らなかったら、裸の艶二郎は寒いのでちょうど持っていた毛氈をかぶっているだけとして、話の真髄にふれることはできませんでした。 

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