2024年10月10日木曜日

江戸生艶氣樺焼 その50

P28 個人蔵書

P29 個人蔵書

(読み)

春そもよふゆ可りのいろも七 ツやの奈尓奈可れ

すそもようゆかりのいろもななつやのなにながれ


多るすミ多゛川 多可゛い尓むりをいをざ起の

たるすみだ がわたが いにむりをいおざきの


かねハ四ツ目や長  命 寺きミ尓ハ

かねはよつめやちょうめいじきみには

(P29)

む年をあくる日のま多

むねをあくるひのまた


四ツ過 のひぢりめん

よつすぎのひじりめん


ふんどし

ふんどし


奈可き

ながき


者るの

はるの


日の

ひの


日高

ひだか



てら尓

てらに


あらすして

あらずして


者多゛可のてやい

はだ かのてあい


いそき行 引  三 重

いそぎゆくひきさんじゅう

(大意)

裾模様、それは紫色の碇も流れてしまって、目の前にはあの隅田川が流れてる。互いに無理を云い、長命寺の鐘が四ツ時で、君(浮名)は明日には解き放されて胸もスッキリするだろうけど、まだ四ツ過ぎで作りたての緋縮緬の湯もじ(腰巻)と長い褌姿、ながい春の日は、日高の寺ではあるまいし、はだかの二人は急ぎ行く。ぺぺんぺんぺん。

(補足)

「ゆ可り」、紫色。碇とゆかりのシャレ。

「七ツや」、質屋。流れるの縁語。

「いをざ起」、五百﨑。向島あたりの古称。無理を「云う」に掛けた。

「四ツ目や」、『よつめや【四つ目屋】

江戸両国にあった淫薬・淫具専門の薬屋。主人を四つ目屋忠兵衛といい,四つ目結(ゆい)を紋とした。長命丸が特に知られていた』

「長命寺」、向島五丁目の隅田川にのぞむ天台宗の寺。

「日高のてら」、和歌山県日高郡の日高川そばの道成寺。謡曲「道成寺」の「急ぐ心からまだ暮れぬ日高の寺に着きにけり」をふまえた。日高は長き春日の縁語。

「者多゛可」、「日高」と「はだか」の語呂合わせ。

「引三重」、浄瑠璃の終末部の三味線の手。

 こういった洒落や引掛けや語呂合わせなど手の込んで調子よく語るところを現在の言葉で言い換えることはとても難しいというか、ほとんど無理です。説明するとリズムがすべてこわれるし、全体的な雰囲気をつかんで感じるのが一番だと思います。

 この頁をまたぐ長い語りを大声で発声してリズムよくペペンペンペンとうなると気分がよいです。

 艶之助、毛氈敷物肩にして、長いふんどし(それでも褌の紐に刀をさしている)、浮名は緋縮緬腰巻き姿、こんなになっても相合い傘で土手路歩く二人のポッコリおなかがかわいらしい。傘に手ぬぐい頬かむり刀に敷毛氈と、道行き小道具失わず。

 

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