2024年10月9日水曜日

江戸生艶氣樺焼 その49

P28P29 東京都立中央図書館蔵

P28 個人蔵書

(読み)

とんと於ち奈バ名や多ゝんどこの女 郎し由可志らミ

とんとおちなばなやたたんどこのじょろしゅかしらみ


ひもむすびの可ミもあちらむ可さん志よ志゛やうゆの

ひもむすびのかみもあちらむかさんしょじ ょうゆの


やき春゛るめびんとひぞるも今 ハ者やむ可しと

やきす るめぴんとひぞるもいまははやむかしと


名りし中 の丁  そと八 もんじもこふ奈れバうち七 もんじ二

なりしなかのちょうそとはちもんじもこうなればうちしちもんじに


多どりゆく奈ミ多゛二ま志゛る水 者゜奈尓ぬらさん

たどりゆくなみだ にまじ るみずば なにぬらさん


さんそでハも多ぬゆへ下多の於びをぞ志本゛りける

さんそではもたぬゆえしたのおびをぞしぼ りける


身に志ミ王多るこち可ぜ尓とり者多゛だちし此 す者多゛

みにしみわたるこちかぜにとりはだ だちしこのすはだ


とのごのか保ハう春ゞミ尓かく多満づさとミる

とのごのかおはうすずみにかくたまづさとみる


かり尓多よりきかんとかくふミのか奈でか奈てこ

かりにたよりきかんとかくふみのかなでかなてこ

(大意)

 どこの女郎衆かしらは知らぬこと、縁結びの神も(虱ときいては)そっぽを向かざんしょ、山椒醤油の焼きスルメ、焼いて焦がれてピンとはったり身悶えしたり、今やはや過去の中ノ町、外八文字で道中したもが、こうとなった今は、格も下がって内七文字の足どりだ。涙にまじる水鼻を、拭う袖ももたぬゆえ、下帯までに、たれてしまった鼻水を、しぼりける。身にしみわたる東風に鳥肌立ってるこの素肌、あなたの顔色は薄墨のように、かく玉づさと見ゆる、雁にたよりをきこうとかくふみの仮名でかくは(裾模様)

(補足)

 浄瑠璃風に七五調子ですので声に出して読むと気分がよいです。この部分も一行一行調べないとよくわかりません。なのでまたながくなりそう。

「志らミひも」、『しらみひも【虱紐】体に締めていれば虱よけになるという紐。江戸時代,江戸芝金杉通りの鍋屋茂兵衛が売り出したもの』。知らないに引っ掛けている。

「う春ゞミ尓かく多満づさとミるかり尓」、『津守国基 つもりのくにもと治安三~康和四(1023-1102)薄墨にかく玉づさと見ゆるかな霞める空にかへる雁がね(後拾遺71)』を引用。【通釈】薄墨色の紙に書いた手紙のように見えるなあ。霞んだ空を、並んで帰ってゆく雁の群は。

【語釈】◇薄墨 薄墨紙の略。◇雁がね もと雁の鳴き声を言ったが、ここでは単に雁のこと。

【補記】曇り空を薄墨紙に、列をなして飛ぶ雁を手紙の文字になぞらえた。古来雁が書信を届ける使者に擬えられたことに因む見立てであって、ただ似て見えるというだけの歌ではない。後世、多くの模倣歌を生んだ、とありました。

「か奈でか奈てこ」、肩に金てこの語呂合わせ。

 大きな鳥居の上部だけ見えていますが、これは(その45)で紹介した三囲神社の画にも描かれていたものです。土手の上からのぞいています。

 

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