2024年10月27日日曜日

時代世話二挺鼓 その12

P6P7 国立国会図書館蔵

(読み)

なんときつい

なんときつい


もの可これでハ

ものかこれでは


仕出しやの

しだしやの


里やうり

りょうり


者゛ん尓

ば んに


い川ても

いっても


よ可らふ

よかろう

P7

そのとき

そのとき


ひでさと

ひでさと


すこしも

すこしも


さ王可゛須

さわが ず


く王い中

か いちゅう


より

より


神 明 まへの

しんめいまえの


なこや

なごや



可川多

かった


者や

はや


王ざ

わざ


八 人 まへを

はちにんまえを


出し

だし


さんじ尓

ざんじに


八 人 まへの

はちにんまえの


なますを

なますを


こしらへ

こしらえ


个れハ

ければ


将 門 よりハ

まさかどよりは


一 人 まへ

いちにんまえ


於ゝき由へ

おおきゆえ


大 き尓

おおきに


へこませる

へこませる

(大意)

将門「どうだ、たいしたものだろう。この腕前ならば仕出し屋の料理番にいってもつとまろう」

 そのとき秀衡少しもあわてずに、ふところより神明前のなこ屋で買った早業八人前を出し、あっという間に八人前のなますをこしらえてしまった。将門よりは一人前多かったので、大いにへこませた。

(補足)

「なんときついもの可」、助六劇(助六所縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら))のせりふに「なんときついものか、大門へぬっとつらを出すと、仲の町の両がわから、なじみの女郎の吸付煙草で・・・」とあって、読者をニヤリとさせる。

「きつい」、『⑥ 大したものだ。素晴らしい。「お娘御の三味線は―・いものでござる」〈咄本・鯛の味噌津』

「そのときひでさとすこしもさ王可゛須」、謡曲「船弁慶」の「そのとき義経すこしもさわがず」をふまえて、やはり読者をにっこりさせる。

「神明まへの」、飯倉神明社のこと。芝増上寺の東にあった。

「なこや」、神明前の有名な刃物店。

「者や王ざ八人まへ」、絵を見ると、百均でも販売しているような野菜千切り器か。京傳はなこ屋で販売しているこれをみて、秀郷が早業の達人という設定を思いついたのだろう、とありました。

「将門よりハ」、ここだけ読めと言われても、ちょっとムリです。

 約230年前に大根スライサーが販売されていたなんて、驚きです。

 

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