P6P7 国立国会図書館蔵
(読み)
なんときつい
なんときつい
もの可これでハ
ものかこれでは
仕出しやの
しだしやの
里やうり
りょうり
者゛ん尓
ば んに
い川ても
いっても
よ可らふ
よかろう
P7
そのとき
そのとき
ひでさと
ひでさと
すこしも
すこしも
さ王可゛須
さわが ず
く王い中
か いちゅう
より
より
神 明 まへの
しんめいまえの
なこや
なごや
て
で
可川多
かった
者や
はや
王ざ
わざ
八 人 まへを
はちにんまえを
出し
だし
さんじ尓
ざんじに
八 人 まへの
はちにんまえの
なますを
なますを
こしらへ
こしらえ
个れハ
ければ
将 門 よりハ
まさかどよりは
一 人 まへ
いちにんまえ
於ゝき由へ
おおきゆえ
大 き尓
おおきに
へこませる
へこませる
(大意)
将門「どうだ、たいしたものだろう。この腕前ならば仕出し屋の料理番にいってもつとまろう」
そのとき秀衡少しもあわてずに、ふところより神明前のなこ屋で買った早業八人前を出し、あっという間に八人前のなますをこしらえてしまった。将門よりは一人前多かったので、大いにへこませた。
(補足)
「なんときついもの可」、助六劇(助六所縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら))のせりふに「なんときついものか、大門へぬっとつらを出すと、仲の町の両がわから、なじみの女郎の吸付煙草で・・・」とあって、読者をニヤリとさせる。
「きつい」、『⑥ 大したものだ。素晴らしい。「お娘御の三味線は―・いものでござる」〈咄本・鯛の味噌津』
「そのときひでさとすこしもさ王可゛須」、謡曲「船弁慶」の「そのとき義経すこしもさわがず」をふまえて、やはり読者をにっこりさせる。
「神明まへの」、飯倉神明社のこと。芝増上寺の東にあった。
「なこや」、神明前の有名な刃物店。
「者や王ざ八人まへ」、絵を見ると、百均でも販売しているような野菜千切り器か。京傳はなこ屋で販売しているこれをみて、秀郷が早業の達人という設定を思いついたのだろう、とありました。
「将門よりハ」、ここだけ読めと言われても、ちょっとムリです。
約230年前に大根スライサーが販売されていたなんて、驚きです。
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