P11P12 国文学研究資料館蔵
P12
(読み)
さんのごとし
さんのごとし
「此 女 中 岩 井喜代太郎 可゛
このじょちゅういわいきよたろうが
ぶ多い可゛本ときて
ぶたいが おときて
うつくしき
うつくしき
うへ尓て可゛
うえにてが
多んとあれ
たんとあれ
バ男 能命
ばおとこのいのち
をけ川゛ること
をけず ること
つけぎや
つけぎや
のごとし
のごとし
「こんやハ又 うちでお可ミ
こんやはまたうちでおかみ
さんとち王川ておそひ
さんとちわっておそい
の可へ多ゝしおぢらしかへ
のかえただしおじらしかえ
お可多じけ
おかたじけ
奈どゝい者れる
などといわれる
多び尓
たびに
命 可゛け
いのちが け
づ連る
ずれる
(大意)
(和中)散のようである。
「この女中は岩井喜代太郎の舞台での顔にそっくりで美しいうえに、あれやこれやたくさんの手練手管で、男の命を削ることなんて付木屋の薄い木片が燃やされるようにすぐやられてしまう。
「今夜はまた、家でおかみさんと仲良くして遅くなるのかい。それともただじらしているだけかい。ごちそうさまだね」などと言われるたびに、命が削れる。
(補足)
「此女中」は鉋で命を削っている男が入れあげている芸者で、場面(芸者が男の奥さんにヤキモチをやいて愚痴っている)はその芸者の部屋、大きな三味線が壁にかかり、こたつに火鉢と、とても豪華であります。また、こたつの上には読本があって、この芸者さん読み書きも達者なよう。こたつの裾にある黒い塊は猫?
「つけぎ」、『つけぎ【付け木】
松や檜(ひのき)の薄い木片の端に硫黄を塗りつけたもの。火を他の物につけ移すのに用いたが,マッチの普及後使用されなくなった。硫黄木。火付け木』