2024年2月24日土曜日

九替十年色地獄 その29

P14 国文学研究資料館蔵

(読み)

ちく

ちく


しやう

しょう


とうの

どうの


くるしミハ

くるしみは


ふりそで

ふりそで


志んぞうの

しんぞうの


ミのうえ尓

みのうえに


ありさし

ありざし


きでハきやく

きではきゃく


尓ミへとこの

にみえとこの


内 へ者い川て

うちへはいって


ミると馬 の

みるとうまの


やうなきやく

ようなきゃく


多び\/

たびたび


ある事 也

あることなり


これら尓も

これらにも


志ん本うして

しんぼうして


あハ年ハ奈ら須

あはねばならず


そのくるしミ

そのくるしみ


ふて尓のへ可多し

ふでにのべがたし

(大意)

 畜生道(遊郭で働くものたち)の苦しみは、振袖新造の身の上にある。座敷では客に見えるが、床のうちに入ってみると、馬のような(巨根の持ち主の)客がたびたびあるのである。これらにも辛抱して会わねばならず、その苦しみは筆だけで述べるのは難しい。

(補足)

「馬」のくずし字は「マ」につづけて「る」のようなかたち。

「事」のくずし字は「る」。

「也」のくずし字は1,2画目が短い横棒で、3画目だけ強調するように「し」。

「ふて尓のへ可多し」、濁点が全部省略されていて、一読では???

 春画では男女の性器が強調されて迫力満点なのですが、さすがここは黄表紙ですから寝床には馬そのものでした。しかしそれではものたらぬと見た京伝、首から上は鼻のでかい旦那に仕上げました。鼻の大きな男は巨根の持ち主だという俗信です。

 ところで、司馬江漢の江漢西遊日記に、遊郭の記述がかなりあります。西へ旅しながらひなびた宿に泊まるのですが、こんな数件の旅籠宿でも遊女がいると、なかば呆れなかば嘆いています。

 

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