2024年2月14日水曜日

九替十年色地獄 その19

P8P9 国文学研究資料館蔵


P9

(読み)

「又 可多て尓ハ

 またかたてには


玉 子やきの

たまごやきの


四角 をふ多

しかくをふた


ちや王ん尓

ちゃわんに


入 てもち給 ふ

いれてもちたもう


これ女 郎 の

これじょろうの


まことといふ

まことという


ミせ可け奈り

みせかけなり


「又 此 志んそう

 またこのしんぞう


本゛さつもあん

ぼ さつもあん


まりきやくを

まりきゃくを


ふるときハ

ふるときは


やりて可゛大

やりてが だい


こく者しらへ

こくばしらへ


由ハへつけ

ゆわへつけ


志んそう

しんぞう


本゛さつきやく

ぼ さつきゃく


しろこん

しろこん


里 うとぞ

りゅうとぞ


志可り个る

しかりける

(大意)

 また片手には、四角く焼いた玉子焼きを蓋茶碗に入れて持ってくださっている。これは女郎にも誠はあるのだぞという見せかけである。

 また、この新造菩薩もあんまり客を断っていると、遣手婆が新造を大黒柱へ結わえ付け、新造菩薩客をとれ建立と、叱るのである。

(補足)

「玉子やきの四角をふ多ちや王ん尓入てもち給ふこれ女郎のまこと」、明和五年(1768)十一月作詞:初代 桜田治助 作曲:富士田吉治・杵屋作十郎の吉原雀という長唄のなかに『女郎の誠と玉子の四角 あれば晦日に月も出る』とあります。意味は歌詞のそのままで、女郎に誠があり四角い玉子があったなら、晦日(みそか)に月が出てしまうと、そんなことはありゃしない。

 部屋の縁に立つ、新造菩薩。右手に鉄棒(金棒を引き鳴らして大声で「火の用心」などと町中にふれあるくところから) ちょっとしたうわさを大げさに言い、ふれあるく人)、左手に四角い玉子焼きを入れた茶碗を持ち、説明がないと意味がわかりません。

 どの着物の柄も、大きな花のようにみえます。

 

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