P10 国文学研究資料館蔵
(読み)
それより多゛ん\/
それよりだ んだん
せいしんして
せいじんして
飛川こミ
ひっこみ
可ぶろと奈り
かぶろとなり
本ど奈く
ほどなく
者゛可らしう
ば からしう
ざんすの川 と
ざんすのかわと
いふ尓い多り
いうにいたり
此 川 尓て
このかわにて
水 あげをされて
みずあげをされて
ミせへ出るそれを
みせへでるそれを
いや可゛るときハ
いやが るときは
やりて者゛ゝア
やりてば ばあ
つらの可ハを
つらのかわを
者ぐ
はぐ
ざん春の川
ざんすのかわ
やりて一 名
やりていちめい
志ぶい可保の
しぶいかおの
者゛ゝア
ば ばあ
(大意)
それからだんだん成人すると、引込み禿となり、ほどなく、バカバカしく聞こえるかもしれぬが、「ざんすの川」というところに行き着く。この川で水揚げをされて見世へ出る。それを嫌がるときは、遣手婆が面の皮をはぐ。
ざんすの川(看板)
遣手一名
渋い顔の婆
(補足)
「飛川こミ可ぶろ」、『ひっこみかぶろ【引っ込み禿】遊女見習いの少女。江戸吉原で,禿が一三,四歳ぐらいになると遊郭の主人付きとして,芸事を習わせたりして部屋持ち以上の遊女になるための準備をさせた者』と辞書にもありました。
地獄では釜茹でにされたり皮をはがされたり舌を抜かれたりする。遣手婆が同じことをする。襖絵はもちろん三途の川。「三途(さんず)」と遊女言葉「ざんす」の引っ掛け。
「ざん春」、変体仮名「春」(す)は「十」+「て」のようなかたち。いまでも変体仮名「者」(は)とよく間違えてしまいます。
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