P6P7 国文学研究資料館蔵
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(読み)
「もしお可ミさんへう王きのさんハ
もしおかみさんへうわきのさんは
此 己ろいせやのきやく人 尓本れて
このごろいせやのきゃくじんにほれて
す川者゜多可尓奈ん奈す川多と
すっぱ だかになんなすったと
お者りし由可゛者奈しまし多よと
おはりしゅが はなしましたよと
ひる年可む者奈お者むき尓いろ\/奈事 を志やべる
ひるねかむはなおはむきにいろいろなことをしゃべる
P6
「ていし由
ていしゅ
大 王 女 郎 の
だいおうじょろうの
きやく尓
きゃくに
P7
あ可゛るをいち\/
あが るをいちいち
くろ可゛年の
くろが ねの
かん者゛ん
かんば ん
い多尓つける
いたにつける
志゛やうッ者゜りの鏡(可ゞミ)
じ ょうっぱ りの かがみ
昼寐(ひる袮)
ひるね
かむ鼻(者奈)
かむ はな
P6
「此 本うこう
このほうこう
人 ハ於や
にんはおや
者んを
はんを
通 して
とおして
めへり
めえり
やし多
やした
王つちらハ
わっちらは
ふミ玉
ふみだま
奈ざア
なざあ
つ可川多事 ハ
つかったことは
ごさりやせん
ござりやせん
マアむ奈くらの
まあむなくらの
五両 も
ごりょうも
可して
かして
於くん奈
おくんな
せへし奈
せえしな
(大意)
「もし、おかみさんへ、浮気の誰かさんはこの頃、伊勢屋の客人に惚れて、すっからかんになんなすったと、お針衆が話していましたよ」と昼寝・かむ鼻がコソコソといろいろなことを告げ口している。
亭主大王は女郎にあがる客をいちいち手堅く帳面につけている。
じょうっぱりの鏡 昼寐 かむ鼻
「この奉公人(女郎)は、親の判をちゃんともらってきました。わっちらは、踏み玉などは使ったことはございやせん。まあ手付に五両も貸しておくんなせえ」
(補足)
「お者りし由」、『〘名〙 遊女屋などに雇われて遊女たちの着物を縫ったり、つくろいものをしたりする女。おはりし。※洒落本・青楼昼之世界錦之裏(1791)「わたくしが袖をばおやぶんなんすし又お針衆(ハリシュ)に小言をいはれんすは」』
「お者むき」、『おはむき 【御歯向き】「はむき」を丁寧にいう語。おせじ。へつらい。「浮世に追従軽薄あれば,参会(であい)に座なり―あり」〈滑稽本・根無草後編〉』
「ふミ玉」、借金などを踏み倒してよその遊所に替わろうとする女郎や芸者。
「む奈くらの」、胸ぐら金、手付金。
前頁の駕籠かきふたり、女衒、ここのおかみさん、みな鬼の角がはえています。
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