2024年2月11日日曜日

九替十年色地獄 その16

P6P7 国文学研究資料館蔵

P7

(読み)

「もしお可ミさんへう王きのさんハ

 もしおかみさんへうわきのさんは


此 己ろいせやのきやく人 尓本れて

このごろいせやのきゃくじんにほれて


す川者゜多可尓奈ん奈す川多と

すっぱ だかになんなすったと


お者りし由可゛者奈しまし多よと

おはりしゅが はなしましたよと


ひる年可む者奈お者むき尓いろ\/奈事 を志やべる

ひるねかむはなおはむきにいろいろなことをしゃべる


P6

「ていし由

 ていしゅ


大 王 女 郎 の

だいおうじょろうの


きやく尓

きゃくに


P7

あ可゛るをいち\/

あが るをいちいち


くろ可゛年の

くろが ねの


かん者゛ん

かんば ん


い多尓つける

いたにつける


志゛やうッ者゜りの鏡(可ゞミ)

じ ょうっぱ りの  かがみ


昼寐(ひる袮)

   ひるね


かむ鼻(者奈)

かむ  はな 


P6

「此 本うこう

 このほうこう


人 ハ於や

にんはおや


者んを

はんを


通 して

とおして


めへり

めえり


やし多

やした


王つちらハ

わっちらは


ふミ玉

ふみだま


奈ざア

なざあ


つ可川多事 ハ

つかったことは


ごさりやせん

ござりやせん


マアむ奈くらの

まあむなくらの


五両  も

ごりょうも


可して

かして


於くん奈

おくんな


せへし奈

せえしな

(大意)

「もし、おかみさんへ、浮気の誰かさんはこの頃、伊勢屋の客人に惚れて、すっからかんになんなすったと、お針衆が話していましたよ」と昼寝・かむ鼻がコソコソといろいろなことを告げ口している。

 亭主大王は女郎にあがる客をいちいち手堅く帳面につけている。

じょうっぱりの鏡 昼寐 かむ鼻

「この奉公人(女郎)は、親の判をちゃんともらってきました。わっちらは、踏み玉などは使ったことはございやせん。まあ手付に五両も貸しておくんなせえ」

(補足)

「お者りし由」、『〘名〙 遊女屋などに雇われて遊女たちの着物を縫ったり、つくろいものをしたりする女。おはりし。※洒落本・青楼昼之世界錦之裏(1791)「わたくしが袖をばおやぶんなんすし又お針衆(ハリシュ)に小言をいはれんすは」』

「お者むき」、『おはむき 【御歯向き】「はむき」を丁寧にいう語。おせじ。へつらい。「浮世に追従軽薄あれば,参会(であい)に座なり―あり」〈滑稽本・根無草後編〉』

「ふミ玉」、借金などを踏み倒してよその遊所に替わろうとする女郎や芸者。

「む奈くらの」、胸ぐら金、手付金。

 前頁の駕籠かきふたり、女衒、ここのおかみさん、みな鬼の角がはえています。

 

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