2024年2月26日月曜日

九替十年色地獄 その31

P15 国文学研究資料館蔵

(読み)

ま多いけづるひ志んそう奈ぞハ

またいけずるいしんぞうなぞは


やりて可゛もゝつ多ぶらへ小可゛多奈

やりてが ももったぶらへこが たな


者りを多てゝせめる

ばりをたててせめる


づるひきの女 郎 を

ずるひきのじょろうを


可しやくする由へ

かしゃくするゆえ


これをづるきの

これをずるきの


山 といふ

やまという

(大意)

 また、クソずうずうしい新造なぞは、遣り手が、股のあたりへ小刀針を

たてて責める。づるひきの女郎をきびしく責めるので、これを「づるきの山」という。

(補足)

「いけ」、さてなんだこれはと調べると『卑しめののしる意を表す形容詞・形容動詞などに付いて,さらにその程度を強める意を表す。「―ずうずうしい」「―好かない」「―ぞんざい」「―しゃあしゃあ」〔近世以降の語。近世前期の上方語では,名詞に付いて用いられた。「―腰抜け」「―年寄り」など〕』とあって、例文を読んで納得。

「小刀針」、鍼灸師が用いる「三稜鍼(さんりょうしん)」のこと。『鍼術に用いられる鍼(はり)の一種で,三稜(かどが三つあること。また,三つのかど。三角)のあるもの。腫(は)れ物の切開や瀉血に用いる』。安永年間(1772〜81)、吉原で遊女が小刀針で折檻死したという事件があり、その話題にふれたのではとありました。

「づるひき」、遊郭では夕方営業開始の際、店先で顔見世と三味線演奏(すががき(清搔・菅搔)『④ 江戸吉原で張り見世を開くとき,店先の格子の中で遊女たちが弾いた,歌を伴わない三味線曲。見世菅搔。』)をした。新造がその役割とものの本にはありました。

「づるきの山」、地獄の「剣山」のしゃれ。

 短い文章ですが吉原に通じてないと、よくわかりません。

 三稜鍼を持つ遣手婆から走って逃げる新造の着物柄が素敵です、ずいぶん凝った柄を描いたものです。 

0 件のコメント:

コメントを投稿