P15 国文学研究資料館蔵
(読み)
ま多いけづるひ志んそう奈ぞハ
またいけずるいしんぞうなぞは
やりて可゛もゝつ多ぶらへ小可゛多奈
やりてが ももったぶらへこが たな
者りを多てゝせめる
ばりをたててせめる
づるひきの女 郎 を
ずるひきのじょろうを
可しやくする由へ
かしゃくするゆえ
これをづるきの
これをずるきの
山 といふ
やまという
(大意)
また、クソずうずうしい新造なぞは、遣り手が、股のあたりへ小刀針を
たてて責める。づるひきの女郎をきびしく責めるので、これを「づるきの山」という。
(補足)
「いけ」、さてなんだこれはと調べると『卑しめののしる意を表す形容詞・形容動詞などに付いて,さらにその程度を強める意を表す。「―ずうずうしい」「―好かない」「―ぞんざい」「―しゃあしゃあ」〔近世以降の語。近世前期の上方語では,名詞に付いて用いられた。「―腰抜け」「―年寄り」など〕』とあって、例文を読んで納得。
「小刀針」、鍼灸師が用いる「三稜鍼(さんりょうしん)」のこと。『鍼術に用いられる鍼(はり)の一種で,三稜(かどが三つあること。また,三つのかど。三角)のあるもの。腫(は)れ物の切開や瀉血に用いる』。安永年間(1772〜81)、吉原で遊女が小刀針で折檻死したという事件があり、その話題にふれたのではとありました。
「づるひき」、遊郭では夕方営業開始の際、店先で顔見世と三味線演奏(すががき(清搔・菅搔)『④ 江戸吉原で張り見世を開くとき,店先の格子の中で遊女たちが弾いた,歌を伴わない三味線曲。見世菅搔。』)をした。新造がその役割とものの本にはありました。
「づるきの山」、地獄の「剣山」のしゃれ。
短い文章ですが吉原に通じてないと、よくわかりません。
三稜鍼を持つ遣手婆から走って逃げる新造の着物柄が素敵です、ずいぶん凝った柄を描いたものです。
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