2023年9月7日木曜日

桃太郎発端話説 その15

P6P7 東京都立図書館蔵

P6

(読み)

ひとむら志げれる多个やぶ尓

ひとむらしげれるたけやぶに


春ゞめ阿つまり春尓つ起て

すずめあつまりすにつきて


たまごを阿多ゝめいるをミ給 ひ

たまごをあたためいるをみたまい


和連このところ尓てむ奈しく

われこのろころにてむなしく


奈るともいちねん春ゝめと

なるともいちねんすずめと


なりてミやこへの本゛り多゛い

なりてみやこへのぼ りだ い


者゛ん志゛与のいゐをく和んと

ば んじ ょのいいをくわんと


こゝろ尓く和んねんし

こころにか んねんし


可のすゝめの多満ごとさね可多

かのすずめのたまごとさねかた


P7

け うのいちねんと可゛つ多いして

きょうのいちねんとが ったいして


いちハのすゞめとけすこ連

いちわのすずめとけすこれ


さ年可多すゞめと申

さねかたすずめともうす


い王れ奈り

いわれなり

(大意)

ひとところに繁っている竹藪に

雀があつまり巣を作って

卵をあたためているいるのを見つけられました。

「わたしはここで死んだとしても

わたしの一念は雀となって

都へ上り(内裏の)台盤所(台所)の飯を

食ってやろう」と

心に念じました。

あの雀のたまごと實方卿の一念が合体して

一羽の雀と化し、

これがのちに「實方雀」といわれる

もとになった。

(補足)

「このところ」、読み間違いそうなひらがながつづいています。

絵は文章のまま、最後の力をふりしぼり、實方雀となって都へ向かう。

實方の顔はわずかの線でその表情を描いていますが、頬をふくらました感じがなんともうまい。

 

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