中P3 東京都立図書館蔵
(読み)
「さてハこのあさり尓毛せ可゛れ
さてはこのあさりにもせが れ
めハ保らの可いのうこのつ起
めはほらのかいのうこのつき
ひ可゛い奈でしこ可゛いでそ多゛て
ひが いなでしこが いでそだ て
多ものさくら可゛いの者奈を
たものさくらが いのはなを
ちらし此 やう奈志゛ゝミをミる
ちらしこのようなし じみをみる
くひとハ保多て可゛いも奈い
くいとはほたてが いもない
ことじや和志ハ可多と起
ことじゃわしはかたとき
も和すれ可゛いぞやとおひ
もわすれが いぞやとおい
志んるいよりち可起多尓し
しんるいよりちかきたにし
志゛やさゞいハあるまい可゛多い
じ ゃさざいはあるまいが たい
ら起奈可゛らきさ満多ちも
らぎなが らきさまたちも
まて可゛いの奈いやう尓多づ
まてが いのないようにたず
袮てく多゛さ連や多とへ
ねてくだ されやたとえ
(大意)
「さては息子がこんなアサリのようなものになってしまうとは大嘘だのう。
月日をかけてわが子を育てたのだよ、桜の花をなんどか散らし、このような
小さいしじみを見ることになるとは、身も蓋もないことじゃ。
わしは片時も忘れないぞ。遠い親類より近きの他人じゃ。
贅沢に暮らしてはおらぬが、平穏にやっておるので、お前たちは間違いのないように
尋ねて来てくだされや。たとえ
(補足)
貝づくしの親雀の台詞。それにしてもてんこ盛り。山東京伝、知っている限りの貝の名前を書き出し、それらをつなぎあわせてこの台詞を考えたのでしょうか。『目八譜(もくはちふ)』という貝類一千種ほどを彩色した大著がありますが、刊行されたのは弘化2年1845年ですので京伝は目にしてません。しかし、似たような書籍があったのではないかとおもいます。
「このあさり尓毛せ可゛れ」、とての判読しずらい。「れ」が「小」にみえます。
「さくら可゛い」、「く」が「つ」にみえます。「く」は縦長のもありますが、このように「ム」のかたちも多い。
「ミるくひ」、「る」が「イ」のようにみえます。下部が欠けていて「る」とかきましたが変体仮名「留」(る)です。
大意はほぼフィクションでありますので、ご承知の程を。
浜から葛籠をぐぐ〜っと力いっぱい引っ張り上げる雀、足もやっと人の脚になってよかったよかった。
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