2023年9月29日金曜日

桃太郎発端話説 その37

中P6P7 東京都立図書館蔵

中P6

(読み)

「志多きり

 したきり


すゞめおやどハ

すずめおやどは


どこじや

どこじゃ


ちよつ\/ ち与

ちょっちょっちょ


「志ら起尓するめ

 しらきにするめ


ゆいのハむこじや

ゆいのはむこじゃ


「志多ぎ尓

 したぎに


すミれ

すみれ


おゑどハ

おえどは


者でじや

はでじゃ


者志゛めお者り

はじ めおわり


奈起ものハ多し可

なきものはたしか


奈らずと可や

ならずとかや


志やうじ起

しょうじき


ふう婦ハ志多

ふうふはした


きりすゞめの由(く)

きりすずめのゆ く


ゑを多づ年尓いて

えをたずねにいで


个る可゛おもふこゝろ能

けるが おもうこころの


まこととゝきて

まこととどきて


すゞめのかくれ

すずめのかくれ


ざと尓多づ年

ざとにたずね


あ多り个れバすゞめ

あたりければすずめ


ども志やうじ起

どもしょうじき


ふうふ可゛大 おんを

ふうふが だいおんを

(大意)

「舌切雀、お宿はどこじゃ。ちょっちょっちょ」

「白木にするめ、結納は婿じゃ」

「下着にすみれ、お江戸は派手じゃ」

 はじめ終わりなきものは確かならずというそうだ。

正直夫婦は舌切雀の行方を尋ねに出かけたのだが、

その心の願いが届き、雀の隠れ里を尋ね当てることができた。

 雀たちは正直夫婦の大恩を

(補足)

「おやど」「おゑど」「お者り」、変体仮名「於」が平仮名「か」にそっくりです。そして「おもふこゝろ」の左二行となりの「かくれ」の「か」と比べてもやはりそっくり。

「志ら起尓」「志多ぎ尓」は「志多きりすゞめおやどハどこじや」と同じ調子の台詞で言葉遊び、洒落です。結納には白木とスルメを縁起物として添える。すみれは紫色、京の紅に対して江戸名産の江戸紫の下着で江戸は派手好み、とものの本にはありました。

 縁側の外、遠くの山間に正直夫婦の、〽お宿はどこじゃと、探し訪ねる小さな姿が見えます。爺さんの右袖には「正」の字がご丁寧に記されています。

 

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