中P1 東京都立図書館蔵
(読み)
者まべをさしてまよひき多
はなべをさしてまよいきた
里ちご可゛ふちの志らきく可゛
りちごが ふちのしらきくか
ふるいけの可者づ可といふ志
ふるいけのかわずかというし
うち尓てどんぶらこととび
うちにてどんぶらこととび
こミし可゛から多゛ののりハ
こみしが からだ ののりは
とけし可゛かんのうち奈り
とけしが かんのうちなり
个連バいつしんこ保りて
ければいっしんこほりて
者満ぐりと奈るぞこじ
はなぐりとなりぞこじ
つけらし起ことゞも奈り
つけらしきことどもなり
まことやあさり者満ぐり
まことやあさりはまぐり
の能りうりを春るといふ
ののりうりをするという
ことばもよりどころある
ことばもよりどころある
ことぞ可し
ことぞかし
(大意)
浜辺をめざしさまよい来て、稚児ヶ淵の白菊か古池の蛙かとみまごう仕草でドンブラコと飛び込むと、からだの糊は溶けたが寒の中(かんのうち)だったので、今度は全身凍って蛤となってしまった。諺の「雀海中に入って蛤となる」というたとえとおりのこじつけになってしまった。諺に「浅蜊、蛤が糊売りする」とあるのは、なるほどもっともなことである。
(補足)
「ちご可゛ふちの志らきく」、『江の島の稚児ヶ淵は、建長寺広徳庵の自休和尚に見初められた、稚児の白菊が、断崖から身を投げ、自休もその後を追ったという伝説が残されている場所』とありました。
「可者づ」、かわずですけど「者(は)」になっています。
「いつしんこ保りて」、変体仮名「保」(ほ)はちょっと変体仮名「阿」(あ)ににています。
「ことゞも奈り」、「こ」「と」はにているのでやっかいです。並んでいるので比べます。
「よりどころある」、ここも「と」「こ」が並んでいるので、比べます。
「ことぞ可し」、ここの「こと」は合字。フォントがありません。「より」の合字「ゟ」はありますけど。
「あさり者満ぐりの能りうりを春る」、諺「浅蜊、蛤が糊売りする」。
アサリやハマグリを行商していた者が、糊売りに転業する、の意から転じて、小さな商売をしていた者が商売替えをしても、所詮は似たようなもので、小さなことしか出来ない、ということ。昔からシジミ売り・アサリ売り・納豆売りは、貧乏人の倅の仕事とされ、その倅は孝子(親によく仕える子供、親孝行な子供のこと)の鏡と称された。とありました。
松の木をササッと描いてしまう絵師が多いのですが、北斎はやけに念入りに描いています。やや小ぶりですが大王松の葉のようにもみえます。
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