P10 東京都立図書館蔵
(読み)
「のりをミん奈せしめ
のりをみんなせしめ
うるしとで多ふさ\/
うるしとでたふさふさ
しい春ゞめでハある
しいすずめではある
うしのつのゝきりくち
うしのつののきりくち
ふとい能袮つけと
ふといのねつけと
き多ハ
きたは
「てんと志やうづ可能者゛ゝア
てんとしょうずかのば ばあ
ろくどうのつぢのぶ多い
ろくどうのつじのぶたい
可゛保とき多ハこの志うち
が おときたはこのしうち
ハ故人 天 幸 もと起すゞ
はこじんてんこうもどきすず
め尓う起めをミせる
めにうきめをみせる
可らハ多けのこ者゛ゝア
からはたけのこば ばあ
でハ奈い可いま尓思 ひ
ではないかいまにおもい
志らせてく連ん
しらせてくれん
「奈んとすさまじ
なんとすさまじ
可ろう可゛やてん
かろうが やてん
志゛やうを
じ ょうを
ミ多可
みたか
(大意)
「のりをみんな食いやがって、ふてぶてしい雀だ。」
「まったく三途の川の婆か、
まるで六道の辻の舞台に現れる悪役の顔ではないか。
この仕草は故人の天幸(二代目中島中島三甫右衛門の俳名)そっくりだ」
雀(七代目中村勘三郎の俳名雀童を暗示)をひどい目にあわせるからには
竹の子婆に違いない。今に思い知らせてくれよう」
「(まだいいのがれをするとは)なんとあきれるほどにひどいうやつだ。
痛い目にあってこりたか」
(補足)
洒落があったり、歌舞伎役者に引っ掛けたりと予備知識がないと理解が追いつきません。
實方雀の台詞がかすれがひどくて、とても読みにくい。
「せしめ(う)る(し)」、せしめるにうるしをたして語呂合わせ。
「うしのつの〜袮つけとき多ハ」、太いにかける洒落。根付には牛の角なども用いる。
「志やうづ可能者゛ゝア」、『しょうずか しやうづ― 【三途河】〔「そうずか」の転〕→三途(さんず)の川に同じ。「―の婆(ばば)(=脱衣婆(だつえば))」』とありました。
「ろくどうのつぢ」、六道の辻。あの世とこの世の境界。
「故人天幸」、1783年没享年58歳。生涯舞台で悪役を演じた。
慳貪婆の上半身が今ひとつだけど、逃げ去る雀は上手。
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