2023年9月4日月曜日

桃太郎発端話説 その12

 

P4P5東京都立図書館蔵

P5

(読み)P4

志やうじきの

しょうじきの


ふう婦ハこの

ふうふはこの


ていをミて御い多王しく

ていをみておいたわしく


おもひさ年可多を和可゛

おもいさねかたをわが


や尓とも奈ひいろ\/い多

やにともないいろいろいた

P5

和り申  ぞやさしき

わりもうしぞやさしき


「奈んぞあげましとうハ

 なんぞあげましとうは


ござりますれどあつまの

ござりますれどあずまの


者ての山 可ときて

はてのさんがときて


おりますれバひ起のや

おりますればひきのや


のどらや起さつま

のどらやきさつま


いもよもの多き

いもよおのたき


春いといふ者゛し与

すいというば しょ


も奈しのきり

もなしのきり


くちといふせん

くちとうせんさ


さくさ

さくさ

(大意)

 正直夫婦はこの有様を見て気の毒におもい

實方を我が家に招き、いろいろやさしくもてなしました。

やさしい夫婦でありました。

「なにか召し上がって頂きたいのでございますが

東国のはての山奥の家でござりますれば、

ひきの屋のどらやき・さつまいも、天下の銘酒滝水も

ないという次第なのであります。(あなたのお口にあうようなものは

なにもございません)


(補足)

 前頁もこの頁でも言葉遊びが多数出てきます。当時のこれらをまとめて流行語とくくるようですが、これらについては「近世文芸『草双紙における流行語の位置 松原哲子』」にくわしい。

「おもひさ年可多を和可゛や尓とも奈ひ」、「おも」も「とも」も読みづらい。

「よもの」、「四方の」を調べると『天下。諸国。「―に号令する」』とありました。

「せんさく」、『 事の次第。「美濃吊しなど引かれては元が息(こ)になる―」〈浄瑠璃・心中二つ腹帯〉 』とありました。


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