2023年9月14日木曜日

桃太郎発端話説 その22

P10 東京都立図書館蔵

(読み)

さてもすゞめハ正  じ起ふう婦可゛

さてもすずめはしょうじきふうふが


いつくしみをうけこち うのくるしミも

いつくしみをうけこちゅうのくるしみも


奈く者奈し可い尓奈りてくらし个る可゛

なくはなしがいになりてくらしけるが


あるひのど可奈るまゝひあ多り尓いで

あるひのどかなるままひあたりにいで


て阿そび个る尓と奈りのけんどん

てあそびけるにとなりのけんどん


者゛ゝ可゛せん多くのりとも志らず

ば ばが せんたくのりともしらず


たらい尓ありしひめのりを

たらいにありしひめのりを


志多ゝ可奈め个る可けんどん

したたかなめけるがけんどん


者゛ゝミつけてんこちも

ば ばみつけてんこちも


奈く者らを多ちて

なくはらをたちて


すゞめの志多を

すずめのしたを


ちよ川きりと

ちょっきりと


ミ志らせてこませ个り

みしらせてこませけり

(大意)

 そうして雀は正直夫婦の慈しみを受け

籠の中で過ごすという苦しみもなく、

放し飼いで暮らしていました。

 あるのどかな天気の良い日、日の当たるところに出て遊んでいるとき、

隣の慳貪婆の洗濯糊とも知らずに、たらいにあった姫糊をたっぷりとなめた

ところを慳貪婆に見つかり、

とんでもなく腹を立て、雀の舌をチョッキリと切って

痛い目に合わせてやりました。

(補足)

「姫糊」、やわらかくたいた飯に水を加えて,すりつぶして作った糊。洗い張りや障子張り替えに用いる。

「正じ起ふう婦可゛」、おじき夫婦ではなく正直夫婦。「正」のくずし字が変体仮名「於」にみえます。

「いつくしみを」、「つく」がくっついているので悩みます。ひらがな「み」もたまに使っているようです。

 

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