P10 東京都立図書館蔵
(読み)
さてもすゞめハ正 じ起ふう婦可゛
さてもすずめはしょうじきふうふが
いつくしみをうけこち うのくるしミも
いつくしみをうけこちゅうのくるしみも
奈く者奈し可い尓奈りてくらし个る可゛
なくはなしがいになりてくらしけるが
あるひのど可奈るまゝひあ多り尓いで
あるひのどかなるままひあたりにいで
て阿そび个る尓と奈りのけんどん
てあそびけるにとなりのけんどん
者゛ゝ可゛せん多くのりとも志らず
ば ばが せんたくのりともしらず
たらい尓ありしひめのりを
たらいにありしひめのりを
志多ゝ可奈め个る可けんどん
したたかなめけるがけんどん
者゛ゝミつけてんこちも
ば ばみつけてんこちも
奈く者らを多ちて
なくはらをたちて
すゞめの志多を
すずめのしたを
ちよ川きりと
ちょっきりと
ミ志らせてこませ个り
みしらせてこませけり
(大意)
そうして雀は正直夫婦の慈しみを受け
籠の中で過ごすという苦しみもなく、
放し飼いで暮らしていました。
あるのどかな天気の良い日、日の当たるところに出て遊んでいるとき、
隣の慳貪婆の洗濯糊とも知らずに、たらいにあった姫糊をたっぷりとなめた
ところを慳貪婆に見つかり、
とんでもなく腹を立て、雀の舌をチョッキリと切って
痛い目に合わせてやりました。
(補足)
「姫糊」、やわらかくたいた飯に水を加えて,すりつぶして作った糊。洗い張りや障子張り替えに用いる。
「正じ起ふう婦可゛」、おじき夫婦ではなく正直夫婦。「正」のくずし字が変体仮名「於」にみえます。
「いつくしみを」、「つく」がくっついているので悩みます。ひらがな「み」もたまに使っているようです。
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