P.17
P.17 上段後半
(読み)
可いてもセ起
かいてもせき
こんできて
こんできて
さつき可らまつて
さっきからまって
いる尓者やく
いるにはやく
く多゛セへいヤ
くだせえいや
ま多゛とぢま
まだ とじま
せ奴といふ尓
せぬというに
とぢるハこつ
とじるはこっ
ちでとぢよふ
ちでとじよう
可らそのまゝで
からそのままで
五十三次 馬士の哥袋 十返舎作 全五冊出来
まごのうたぶくろ
夷曲春ゞれ艸 同集 全二冊
いきょくすずれくさ
同東日記 千秋菴撰 十偏舎集
どうあずまにっき
(大意)
買い手もあせってきて
さっきから待ってるんだ、はやくくだせえ
いえ、綴じてませんのでと言っても
綴るのこっちで綴るからそのままで
(補足)
「セ起こんで」、咳き込むの方ではなく急き込むで、あせって、気持ちがせいて。
ここでは変体仮名「起」(き)を使っていて、このすぐ左の行では平仮名「き」を使ってます。いつもながらなんか納得しません。行き当たりばったり気分次第で使い分けていそう。
「者やくく多゛セへ」、同じ「く」でもずいぶん形が異なります。後のは「乙」そのもの。
「や」もいろいろでカタカナ「ヤ」もまじります。
店先の宣伝垂れ幕(紙)もにぎやかで売り込んでいます。
それぞれの書籍の内容はネットで検索すると出てきますのでお調べください。
「曲」のくずし字が、一筆書きのように左の縦線からはじまり、「リ」の2画目から左回りにくるっとまわって下部で「一」。彫師もたいしたもんです。
店頭の日除けには「栄邑堂」(えいきゅうどう)「◯◯町」(日本橋中橋松川町か?)
箱看板には「さうしとんや」「◯村 本問屋」
店先の殺気立った賑わいをみると、文章にあるように摺ったままの紙と表紙、綴じ糸をそのままひと組にして販売していても不思議ではありません。