P.10
(読み)
たまのよふなるなんし
たまのようなるだんし
多んじやう阿り
たんじょうあり
於やこともむしけ
おやこともむしけ
ちにミちのうれ
ちのみちのうれ
いなく春こ
いなくすこ
やか尓ひたち
やかにひだち
个る由へそのよろこび?ふ
けるゆえそのよろこび?う
か多なら春゛一 家しんるいさ可い
かたならず いっかしんるいさかい
个るこそめで多しゝゝ
けるこそめでたしめでたしめでたし
(大意)
玉のような男子が誕生しました。
親子ともに(赤ちゃんには)虫家や
(母親には)血の道の心配はなく
健やかに(産後の)肥立ちも心配はありませんでしたので
その喜びようは大変なものでありました。
一家親類栄えることこそ、めでたしめでたしめでたし
(補足)
最後のページはめでたしめでたしめでたしで終わるのがお決まりですが、
ここはなんと読むのだろうとちっともめでたくはありません。
一行目のふたつの「な」は現在とほとんど同じ。「なんし」と読めても意味が不明ですが、読み進めると「男子」だろうとわかります。4行目の「な」も現在と同じ。
「たまのよふなる」では平仮名「た」ですが、その左側では変体仮名「多」です。
そして「多んじやう」の次が「た」にも「な」にも見えますが「阿」(あ)でした。
「おやことも」の出だしも悩みます。変体仮名「於」のようにみえます。
「むしけ」(虫家)、「む」がこれまた悩む。
「そのよろこび?ふか多なら春゛」、ここが一番悩みました。
「か多なら春゛」は「一方(ひとかた)ならず」の「一」が省略されていると荒っぽく判断すれば意味は通じます。そうすると「?」は「や」としたいのですが、そうは読めません。
変体仮名「个」にも似てますが、この豆本で出てきた「个」はたいてい「个る」の例が多く、また字体も小さい。うーん、わかりませんでした。
「一家」(いっか)、これは漢字。平仮名ばかりで悩んでいるところへいきなり漢字が出てくるとこれまた一瞬悩むんです。
「しんるい」、「るい」が「ゑ」に見えてしまいます。
「さ可い个る」、「さ」の一画目「一」が弱いので「と」のようにも見えてしまう。
「めで多し」、「め」の一画目の逆「ノ」があるかないかですが、最後のお約束言葉なので「め」。
新婚さんホヤホヤだからでしょうか、お玉さんは振り袖です。
表は渋い青で落ち着きさを、でも内側は赤と黄色で若さをと粋ですね。