P63 東京国立博物館蔵
(読み)
カコ六 人 ニして艪(ロ)を押(ヲ)春走 る事 誠(マコトニ)矢の如 し
かころくにんにして ろ を お すはしること まことに やのごとし
風 柔(ヤハラ)可尓して浪 なし只 う袮里と云 て山
かぜ やわら かにしてなみなしただうねりといいてやま
能如 く尓なるなりタカマツ潮 を吹くタカマツ来 リ
のごとくになるなりたかまつしおをふくたかまつきたり
てハ鯨 不居 夫[タカマツハ鯨 ヲ喰フ魚 ナリ]より生 月 能方 へ古ぎよせて
てはくじらおらずそれたかまつはクジラをくううおなり よりいきつきのほうへこぎよせて
返 り个る尓さて鯨 舟 ハ婦なべ里ヲトン\/と頻(シキリ)
かえりけるにさてくじらふねはふなべりをとんとんと しきり
尓打ツ事 なり其 音 海 底 ヘ響(ヒゝキ)て鯨 を驚(ヲドロカス)
にうつことなりそのおとかいていへ ひびき てくじらを おどろかす
なり舟 中 より地續 キ能方 を望 ム尓誠 尓
なりせんちゅうよりじつづきのほうをのぞむにまことに
支那(カラ)能地可と訝(ウタカハ)連个り此 日爰 の春ゝ取 能
から のちかと うたがわ れけりこのひここのすすとりの
祝 イとて生 酢などして春ゝハ不取
いわいとてなますなどしてすすはとらず
十 四 日亦 雨 バラツク新 四郎 方 へ松 本 ニて見(ミ)
じゅうよっかまたあめばらつくしんしろうかたへまつもとにて み
(大意)
略
(補足)
「カコ」、『かこ【〈水夫〉・〈水手〉】〔「か」は梶(かじ),「こ」は人の意〕船を操る人。古くは広く船乗り全般をさしたが,江戸時代には下級船員をいった』
「タカマツ」、『「高松鯨」または「高松海馬」とも。日本列島では伝説上の生物「鯱」にちなんだ「シャチ」という標準和名のほかにも、「サカマタ」と「タカマツ」を筆頭に、「シャチホコ」「シャカマ」「タカ」「クジラトウシ」「クロトンボ」「オキノカンヌシ」など多様な別名が存在する』とありました。
頭注は文化12(1815)年江漢の注釈。この日記は江漢が亡くなるまで出版することなく手元においていたため、本文や注釈をたびたび見直し書き加えています。
「生酢」、『なます【膾・鱠】① 魚や貝,あるいは獣の生肉を細かく切ったもの。また,それを,調味した酢にひたした料理。② 野菜を細かく刻んで三杯酢やゴマ酢などで和えた料理。魚や貝を入れることもある』
「十四日」、天明8年12月14日。1789年1月9日。
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