P7 東京国立博物館蔵
P8P9
(読み)
誠 尓深 山 ニして渓 水 飛ヒ流 ル日も晩 景 ニなり
まことにしんざんにしてけいすいとびながるるひもばんけいになり
け連ハ庄 屋の家 尓泊 ル此 家 障 子なし夜 ニ
ければしょうやのいえにとまるこのいえしょうじなしよるに
なれとも燈 火なし松 の婦しをともしびと春
なれどもとうかなしまつのふしをともしびとす
寝入りて夜更(フケ)猪(シゝ)を追(ヲ)フ聞(コヱ)をきく江戸
ねいりてよ ふけ しし を お う こえ をきくえど
尓産 れて此 山 中 ニ至 ル事 初 メなりハ奇妙
にうまれてこのさんちゅうにいたることはじめなりばきみょう
尓珍ツラしく思 ヒぬ爰 迄 来ル路 より人 をや
にめずらしくおもいぬここまでくるみちよりひとをや
とゐ荷物 を為持 し尓廿 二三 能女 なり
といにもつをもたせしににじゅうにさんのおんななり
ひ多ゐニて背(セ)負(ヲゝ)なり顔 色 を見れハ相(ソヲ)
ひたいにて せ おう なりかおいろをみれば そう
應 尓見ヘ衣(イ)装(セ ウ)を能くし化粧(ケセ ウ)春るならハ
おうにみえ い しょう をよくし けしょう するならば
美人 とも云 へし可゛かゝる山 家尓産(ウマ)れて
びじんともいうべしが かかるさんかに うま れて
P8
かゝる王ざを春る事 哉 とて感 じ个連
かかるわざをすることかなとてかんじけれ
熊 村 の圖
くまむらのず
P9
鳳(ホウ)来(ライ)寺ノ方
ほう らい じのほう
重 山 かきりなく
ちょうざんかぎりなく
見ヘル
みへる
(大意)
略
(補足)
「松の婦しをともしび」、松は油分が多いので松明などに使われますが、大きな節の部分は製材するときに除かれて捨てられてしまいます。貧しい庄屋ではそれらも燃やして灯火としたのかもしれません。
「猪(シゝ)を追(ヲ)フ」、山深い地域、獣のほうが優勢でしょうから、夜更けでもなんでもいつでも、作物を守らなければ食べていけなかった。
「ひ多ゐニて背(セ)負(ヲゝ)なり」、「庵原深山の婦人(西遊旅譚一)」の画。「廿二三能女」には見えませんが・・・
熊村の図はなるほど険しい。江漢の手になると、どこかのどかな雰囲気になってしまいますけど。P9の下の方をよく見ると、天秤棒をかついでいる人が小さく描かれています。これはきっと下僕の弁喜に違いありません。
また囲いのようなものがいたるところにありますが、これが獣よけの柵なのでしょう。
街道の一里とは全く異なり、山路・渓谷・川など乗り越え渡らなければならぬものがたくさんあって、その大変さはちょっと想像がつきません。がんばれ弁喜!
0 件のコメント:
コメントを投稿