P22 東京国立博物館蔵
(読み)
此 者 を吊 ンとて従 者 と二 人して参 リ个る尓漸(ヨウヤク)
このものをとぶらわんとてじゅうしゃとふたりしてまいりけるに ようやく
昼 比 尓至 リ个る鈴 木氏宿 ニ居て酒 肴 を
ひるごろにいたりけるすずきしやどにいてしゅこうを
出して馳走 春る爰 ニ久保幸 助 と云 者 来ル
だしてちそうするここにくぼこうすけというものくる
十 七 日 雨 時 々 降ル同 藩 尓伊藤 孫 右衛門と
じゅうしちにちあめときどきふるどうはんにいとうまごえもんと
云 者 雪 渓 の門 人 ニて画を描ク鈴 木氏と共
いうものせっけいのもんじんにてえをかくすずきしととも
尓久保氏を吊 フ二十 町 程 隔 リ多る処 なり
にくぼしをとぶらうにじっちょうほどへだたりたるところなり
此 路 河 原能巾 一 町 程 アル砂漠 アリ石磊(ゴロゴロ)として水 なし
このみちかわらのはばいっちょうほどあるさばくありいし ごろごろ としてみずなし
湯能山 青 瀧 と云 瀧 の流 れの末 なり漸 く尓
ゆのやませいりゅうというたきのながれのすえなりようやくに
して至 ル主 人 は文 人 にして風 流 なり坐右 ニ文
していたるしゅじんはぶんじんにしてふうりゅうなりざゆうにぶん
房 をかさり珍 器多し 甚 タ馳走 春る返 ラん
ぼうをかざりちんきおおしはなはだちそうするかえらん
(大意)
略
(補足)
「吊ンとて」、何度も出てきています。とぶらう『とぶらふ 【訪ふ】
① 訪問する。おとずれる。たずねて行く。たずねて来る。「秋の野に人まつ虫の声すなり我かと行きていざ―・はむ」〈古今和歌集•秋上〉』
「久保幸助」、寛保二(1742)年〜文化五(1808)年。村役人を務め、天明四(1784)年からは代官役を命ぜられ25年間務めるかたわら家塾(修講館)を開いて人材の育成に力を尽くした。とありました。
「十七日」、天明8年七月十七日。1788年8月18日。
「雪渓」、江漢の画の師である宋紫石こと楠本雪渓(1715〜1786)のことか?
「河原能巾」、「原」の左側は「参リ」(一行目にもあります)ともみえますが、ふたつの漢字が似ているので不明です。
「水なし」、たまに「水」のくずし字が使われます。
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