P29 東京国立博物館蔵
(読み)
衣(コロモ)能両 の袖 ヲ翻(ヒルカシ)个り熊 一 向 人 能来ル事 を不
ころも のりょうのそでを ひるかし けりくまいっこうひとのくることをしら
知風意(フイ)なる故 尓熊 人 の如 く尓両 手を揚 て
ず ふい なるゆえにくまひとのごとくにりょうてをあげて
立 ける勢(イキヲイ)尓あを能け尓谷 底(ソコ)へ落チ个り
たちける いきおい にあおのけにたに そこ へおちけり
夫 故 あとをも見春゛して尓げ返(カヱ)リ个る故 尓
それゆえあとをもみず してにげ かえ りけるゆえに
瀧 を見春゛亦 江戸ヤと云 旅 人 宿 アリ其 主
たきをみず またえどやというたびびとしゅくありそのしゅ
人 下 菰 野ヘ行キかえるニて甚 タ酒 を呑 て
じんしもこものへゆきかえるにてはなはださけをのみて
酔(ヨイ)一 里方 なる彼 原 中 ニて狼 三 足 出て
よい いちりほうなるかのはらなかにておおかみさんぴきでて
飛ヒかゝ里しをよい多る勢 ヒ尓樫(カシ)の木能棒(ボウ)ヲ
とびかかりしをよいたるいきおいに かし のきの ぼう を
腰 尓指シて居シが其 棒 尓て三 足 なか
こしにさしていしがそのぼうにてさんびきなか
ら打 殺 し多り酒 と云フ物 ハ春ざましき
らうちころしたりさけというものはすざましき
(大意)
略
(補足)
「翻(ヒルカシ)」、ひるがえし。
「三足」、三疋。
「なから」、『【半ら・中ら】① およそ半分。なかば。「盤渉調(ばんしきちよう)の―ばかり吹きさして」〈源氏物語•横笛〉「おそろしかりけむけしきに―は死にけむ」〈落窪物語•1〉』『なからじに 【半ら死に】死にかかっていること。半死半生。「男は浅疵(あさきず)―殺してくれい死なしてくれと泣き叫ぶ」〈浄瑠璃・卯月の潤色•上〉』
この頃は、まだまだ狼が普通に野山にたくさんいたようです。かのシーボルトもニホンオオカミの剥製を持ち帰っていました。
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