2025年1月23日木曜日

江漢西遊日記二 その23

P29 東京国立博物館蔵

(読み)

衣(コロモ)能両  の袖 ヲ翻(ヒルカシ)个り熊 一 向 人 能来ル事 を不

  ころも のりょうのそでを  ひるかし けりくまいっこうひとのくることをしら


知風意(フイ)なる故 尓熊 人 の如 く尓両  手を揚 て

ず   ふい なるゆえにくまひとのごとくにりょうてをあげて


立 ける勢(イキヲイ)尓あを能け尓谷 底(ソコ)へ落チ个り

たちける  いきおい にあおのけにたに  そこ へおちけり


夫 故 あとをも見春゛して尓げ返(カヱ)リ个る故 尓

それゆえあとをもみず してにげ  かえ りけるゆえに


瀧 を見春゛亦 江戸ヤと云 旅 人 宿  アリ其 主

たきをみず またえどやというたびびとしゅくありそのしゅ


人 下 菰 野ヘ行キかえるニて甚  タ酒 を呑 て

じんしもこものへゆきかえるにてはなはださけをのみて


酔(ヨイ)一 里方 なる彼 原 中 ニて狼   三 足 出て

  よい いちりほうなるかのはらなかにておおかみさんぴきでて


飛ヒかゝ里しをよい多る勢  ヒ尓樫(カシ)の木能棒(ボウ)ヲ

とびかかりしをよいたるいきおいに  かし のきの  ぼう を


腰 尓指シて居シが其 棒 尓て三 足 なか

こしにさしていしがそのぼうにてさんびきなか


ら打 殺 し多り酒 と云フ物 ハ春ざましき

らうちころしたりさけというものはすざましき

(大意)

(補足)

「翻(ヒルカシ)」、ひるがえし。

「三足」、三疋。

「なから」、『【半ら・中ら】① およそ半分。なかば。「盤渉調(ばんしきちよう)の―ばかり吹きさして」〈源氏物語•横笛〉「おそろしかりけむけしきに―は死にけむ」〈落窪物語•1〉』『なからじに 【半ら死に】死にかかっていること。半死半生。「男は浅疵(あさきず)―殺してくれい死なしてくれと泣き叫ぶ」〈浄瑠璃・卯月の潤色•上〉』

 この頃は、まだまだ狼が普通に野山にたくさんいたようです。かのシーボルトもニホンオオカミの剥製を持ち帰っていました。

 

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