2024年9月26日木曜日

江戸生艶氣樺焼 その36

P20 東京都立中央図書館蔵

(読み)


げん

げん


本゛り

ぼ り




ある

ある


げい

げい


しや

しゃ


七 八 人

しちはちにん


ゑん二郎 二

えんじろうに


やと王れ可んどうの

やとわれかんどうの


ゆりるよふ二と

ゆりるようにと


あさくさの

あさくさの


く王んのんへ

か んのんへ


者多゛しまいりを

はだ しまいりを


する奈る本ど

するなるほど


者多゛しまいりと

はだ しまいりと


いふや川可゛大 可多ハ

いうやつが おおかたは


う王き奈もの也

うわきなものなり


ゑゝ可げん二

ええかげんに


奈ぐつて者やく

なぐってはやく


志ま王をねへ

しまわをねへ


十  ど

じゅうど


まいり

まいり


くらひで

くらいで


いゝのさ

いいのさ

(大意)

 薬研堀の有名な芸者七八人が艶二郎に雇われ、勘当が許されるようにと、浅草の観音様へ裸足参りをする。なるほど裸足参りというやつは、ほとんどが浮気なことからのものである。

芸者一「いい加減にうっちゃって早くおしまいにしちまおう」

芸者二「十度参りくらいでいいのさ」

(補足)

「やげん本゛り」、『やげんぼり【薬研堀】

② 江戸時代,現在の東京都中央区東日本橋両国にあった堀の名。江戸中期に埋め立てられた。不動堂があり,また付近は芸者,中条流の医師が多く居住した』

「ゆりる」、『ゆ・りる【許りる】

① ゆるされる。許可される。赦免される。「貴方(あなた)の御勘当が―・りてから」〈怪談牡丹灯籠•円朝〉』

「奈ぐつて」、『なぐ・る【殴る・擲る・撲る】』

③ 投げやりにものをする。「ええかげんに―・つてはやくしまはうねえ」〈黄表紙・江戸生艶気樺焼〉

「やと王れ可んどうの ゆりるよふ二と」、「や」と「ゆ」、よく見れば違いはありますが、ほとんどおなじかたちです。ながれから読んだほうがよさそう。

 浅草観音の境内で裸足参りをする芸者三人。左の芸者は右手に藁の緡(さし)『② 百本のこより,または細い縄を束ねて根元をくくったもの。神仏への百度参りのとき,数を数えるのに用いた。百度緡。「おその下女にてお百度の―を持ち」〈歌舞伎・お染久松色読販〉』を持っている。

 足元には銀杏の葉が散り、うしろの葦簀(よしず)がけの店は目玉のような的印の土弓場(どきゅうば)。その右は「御屋うじ所 柳やすぐ兵衛」の看板、つまり、浅草の奥山の銀杏の木のあたりで、ここには房楊枝や爪楊枝を売る店が多く、それぞれ美人の看板娘をおいていた。土弓場はとくに看板娘目当ての浮気男の集まるところでもありました。

 なかでも明和五(1768)年頃、柳屋のお藤という美人は笹森お仙とならび称され、錦絵や唄にもなり銀杏娘と呼ばれた。

 というような、とても深い背景が(ものの本にあって)この画には描き込まれているのでありますが、当時の人達はこの画をひと目みるなり、ニヤリとしたことでありましょう。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿