P11 東京都立中央図書館
(読み)
きよねんの者る
きょねんのはる
奈かずて可つ多ぢこくでハ
なかずでかったぢごくでは
ねへ可志らん
ねぇかしらん
志やう
しょう
遍゛ん
べ ん
ぐミ奈どゝ
ぐみなどと
いふところハ
いうところは
ごめん多゛よ
ごめんだ よ
王多しを於可ゝへ
わたしをおかかえ
奈されましても
なされましても
大 可多女 郎 可いや
おおかたじょろうかいや
いろごとで
いろごとで
王たし二
わたしに
於可まいハ
おかまいは
奈されます
なされます
まいと
まいと
もふ春こし
もうすこし
てミせ尓
てみせに
やき
やき
可ける
かける
(大意)
艶二郎「去年の春、中洲で買った地獄ではねえよな。小便組などというようなことがあっては、ごめんだよ」
女「わたしをお抱えなされましても、おおかた女郎買いや色ごとで、わたしにおかまいはなされますまい」と、もう自分の腕前を少しみせて焼きもちをやいてみせた。
(補足)
「奈かず」、「中洲」現在の中央区日本橋中洲。三つ又新地ともいい安永元(1772)年着手、数年後江戸屈指の歓楽街となった、とありました。
「ぢこく」、『じごく ぢ―【地獄】⑦ 売春婦。私娼(ししよう)。「中洲でかつた―ではねえかしらん」〈黄表紙・江戸生艶気樺焼〉』
「志やう遍゛んぐミ」、『しょうべんぐみ せう―【小便組】
江戸時代,妾(めかけ)奉公に出て寝小便をして暇を出されるとき,支度金をだましとる女。また,それをすること。「―などといふところは,ごめんだよ」〈黄表紙・江戸生艶気樺焼〉』
「てミせ」、『てみせ【手見せ】腕前・技量を人に見せること』
艶二郎のうしろにかかっている札には「篆書偏類六書通」という字体で「小便無用」
とあり花山書とあります。
宝井其角の有名な句に「此処小便無用花の山」(講談「屏風の蘇生」)というのがあって、艶二郎のセリフ(心境)に引っ掛けて洒落ている、とありました。
二百両で抱えられたお姉さん、後ろ姿だけでも、なんともあだっぽいですねぇ・・・
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