2024年9月9日月曜日

江戸生艶氣樺焼 その19

P11 東京都立中央図書館

(読み)

きよねんの者る

きょねんのはる


奈かずて可つ多ぢこくでハ

なかずでかったぢごくでは


ねへ可志らん

ねぇかしらん


志やう

しょう


遍゛ん

べ ん


ぐミ奈どゝ

ぐみなどと


いふところハ

いうところは


ごめん多゛よ

ごめんだ よ


王多しを於可ゝへ

わたしをおかかえ


奈されましても

なされましても


大 可多女 郎 可いや

おおかたじょろうかいや


いろごとで

いろごとで


王たし二

わたしに


於可まいハ

おかまいは


奈されます

なされます


まいと

まいと


もふ春こし

もうすこし


てミせ尓

てみせに


やき

やき


可ける

かける

(大意)

艶二郎「去年の春、中洲で買った地獄ではねえよな。小便組などというようなことがあっては、ごめんだよ」

女「わたしをお抱えなされましても、おおかた女郎買いや色ごとで、わたしにおかまいはなされますまい」と、もう自分の腕前を少しみせて焼きもちをやいてみせた。

(補足)

「奈かず」、「中洲」現在の中央区日本橋中洲。三つ又新地ともいい安永元(1772)年着手、数年後江戸屈指の歓楽街となった、とありました。

「ぢこく」、『じごく ぢ―【地獄】⑦ 売春婦。私娼(ししよう)。「中洲でかつた―ではねえかしらん」〈黄表紙・江戸生艶気樺焼〉』

「志やう遍゛んぐミ」、『しょうべんぐみ せう―【小便組】

江戸時代,妾(めかけ)奉公に出て寝小便をして暇を出されるとき,支度金をだましとる女。また,それをすること。「―などといふところは,ごめんだよ」〈黄表紙・江戸生艶気樺焼〉』

「てミせ」、『てみせ【手見せ】腕前・技量を人に見せること』

 艶二郎のうしろにかかっている札には「篆書偏類六書通」という字体で「小便無用」

とあり花山書とあります。

 宝井其角の有名な句に「此処小便無用花の山」(講談「屏風の蘇生」)というのがあって、艶二郎のセリフ(心境)に引っ掛けて洒落ている、とありました。

 二百両で抱えられたお姉さん、後ろ姿だけでも、なんともあだっぽいですねぇ・・・

 

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