P18 東京都立中央図書館
(読み)
ゑん二郎 志者゛ゐをミてと可くいろ男 と
えんじろうしば いをみてとかくいろおとこと
いふものハぶ多れるものと於もひ
いうものはぶたれるものとおもい
志きり二ぶ多れ多く奈り志゛ま王り
しきりにぶたれたくなりじ まわり
のき於ひをひとりまへ三 両 ツゝ尓て
のきおいをひとりまえさんりょうずつにて
四五人 多のミ中 の丁 の人 高 い
しごにんたのみなかのちょうのひとだかい
所 尓てぶ多れる徒もりで
ところにてぶたれるつもりで
ちややの二可い二ハ藤 兵へを
ちゃやのにかいにはとうべえを
やとゐ於きてめりやすを
やといおきてめりやすを
う多王せミ多゛れ多可ミ
うたわせみだ れたかみ
をうき奈尓春可せる
をうきなにすかせる
つもり尓てさ可やきへハ
つもりにてさかやきへは
(大意)
艶二郎は芝居を見てどうやら色男というものは、ぶたれるものだとおもい、しきりにぶたれたくなった。地廻りの威勢のいい連中をひとり三両ずつで四五人を雇い、中の町の人通りの多いところでぶたれるつもりで、また茶屋の二階には藤兵衛を雇いおきてめりやすを唄わせ、みだれ髪を色男っぽくすかせるつもりで月代(さかやき)には、
(補足)
「藤兵へ」、吉原の男芸者、荻江藤兵衛。荻江節『宝暦・明和(1751〜1772)頃,荻江露友(?〜1787)が始めた座敷芸風の唄。長唄から派生したもので,地歌の曲調をも取り入れ,伴奏には囃子(はやし)を用いず三味線だけを用いる』をよくした、とありました。
「藤」のくずし字もそこそこでてきて「艹」+「友」のようなかたち。
「めりやす」、『〔場面により演奏が伸縮できることから〕
① 下座音楽の一,かつ,長唄の曲種の一。独吟の唄と三味線一挺(ちよう)のみのしんみりとした曲。芝居では,役者が台詞(せりふ)なしで静かな演技を続ける心理描写的な場面(思い入れなど)で,効果音楽として陰で演奏される。「黒髪」「五大力」など。
② 義太夫節の三味線の手の一。フシ(旋律的な語り)のない部分で,コトバ(台詞)や人物の動きの伴奏として,短い旋律型を繰り返して演奏する』。以前にも出てきました。
「ミ多゛れ多可ミ」、髪梳(かみすき)は曽我狂言の趣向。曽我十郎のみだれ髪を大磯の宿の遊女、虎御前にすかせる。それをまねてめりやすを三味線一本と唄でやろうとした、とありました。もう何から何まで芝居がかっていて、とことん馬鹿を極める艶二郎であります。
関取並みにガタイのいい「志゛ま王りのき於ひ」二人にぶたれる艶二郎、やらせとはいえ真に迫りすぎ、このあと気を失う。ばかだねぇ。左の男の腰の煙草入れと煙管いれ、おしゃれであります。
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