2024年9月21日土曜日

江戸生艶氣樺焼 その31

P18 東京都立中央図書館

(読み)

ゑん二郎 志者゛ゐをミてと可くいろ男  と

えんじろうしば いをみてとかくいろおとこと


いふものハぶ多れるものと於もひ

いうものはぶたれるものとおもい


志きり二ぶ多れ多く奈り志゛ま王り

しきりにぶたれたくなりじ まわり


のき於ひをひとりまへ三 両  ツゝ尓て

のきおいをひとりまえさんりょうずつにて


四五人 多のミ中 の丁  の人 高 い

しごにんたのみなかのちょうのひとだかい


所  尓てぶ多れる徒もりで

ところにてぶたれるつもりで


ちややの二可い二ハ藤 兵へを

ちゃやのにかいにはとうべえを


やとゐ於きてめりやすを

やといおきてめりやすを


う多王せミ多゛れ多可ミ

うたわせみだ れたかみ


をうき奈尓春可せる

をうきなにすかせる


つもり尓てさ可やきへハ

つもりにてさかやきへは

(大意)

 艶二郎は芝居を見てどうやら色男というものは、ぶたれるものだとおもい、しきりにぶたれたくなった。地廻りの威勢のいい連中をひとり三両ずつで四五人を雇い、中の町の人通りの多いところでぶたれるつもりで、また茶屋の二階には藤兵衛を雇いおきてめりやすを唄わせ、みだれ髪を色男っぽくすかせるつもりで月代(さかやき)には、

(補足)

「藤兵へ」、吉原の男芸者、荻江藤兵衛。荻江節『宝暦・明和(1751〜1772)頃,荻江露友(?〜1787)が始めた座敷芸風の唄。長唄から派生したもので,地歌の曲調をも取り入れ,伴奏には囃子(はやし)を用いず三味線だけを用いる』をよくした、とありました。

「藤」のくずし字もそこそこでてきて「艹」+「友」のようなかたち。

「めりやす」、『〔場面により演奏が伸縮できることから〕

① 下座音楽の一,かつ,長唄の曲種の一。独吟の唄と三味線一挺(ちよう)のみのしんみりとした曲。芝居では,役者が台詞(せりふ)なしで静かな演技を続ける心理描写的な場面(思い入れなど)で,効果音楽として陰で演奏される。「黒髪」「五大力」など。

② 義太夫節の三味線の手の一。フシ(旋律的な語り)のない部分で,コトバ(台詞)や人物の動きの伴奏として,短い旋律型を繰り返して演奏する』。以前にも出てきました。

「ミ多゛れ多可ミ」、髪梳(かみすき)は曽我狂言の趣向。曽我十郎のみだれ髪を大磯の宿の遊女、虎御前にすかせる。それをまねてめりやすを三味線一本と唄でやろうとした、とありました。もう何から何まで芝居がかっていて、とことん馬鹿を極める艶二郎であります。

 関取並みにガタイのいい「志゛ま王りのき於ひ」二人にぶたれる艶二郎、やらせとはいえ真に迫りすぎ、このあと気を失う。ばかだねぇ。左の男の腰の煙草入れと煙管いれ、おしゃれであります。


 

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