2024年9月16日月曜日

江戸生艶氣樺焼 その26

P15 東京都立中央図書館蔵

他の黄表紙

(読み)

ゑん二郎 五六 日

えんじろうごろくにち


ぶり尓てうちへ

ぶりにてうちへ


可ゑりけれバ

かえりければ


まち毛うけ多る

まちもうけたる


め可けこゝぞ

めかけここぞ


本うこうの

ほうこうの


志ところと可年て

しどころとかねて


ふくして於ゐ多

ふくしておいた


ぞんぶんを

ぞんぶんを


やき可ける

やきかける


本ん二於とこといふ

ほんにおとこという


ものハ奈ぜ

ものはなぜ


そん奈尓

そんなに


きづよい

きづよい


もん多゛ねへ

もんだ ねぇ


それ本ど二

それほどに


本れ

ほれ


られる

られる


可゛いや

が いや


奈ら

なら


そん

そん


奈いゝ

ないい


於とこ尓

おとこに


うまれ徒可ねへ可゛

うまれつかねぇが


いゝのさま多

いいのさまた


女 郎 も女 郎 多゛

じょろうもじょろうだ


ひとの大 じの

ひとのだいじの

(大意)

 艶二郎は五六日ぶりに家へ帰ってきたので、準備して待ち受ける妾はここが奉公のしどころと、かねてから練習しておいた焼きもちの言葉を存分に言った。

妾「ほんに男というものは、なぜそんなにつれないもんなんだろうねぇ。それほどに惚れられるのが嫌なら、そんないい男に生まれなけりゃよかったのさ。また女郎も女郎だ。人の大事な」

(補足)

 下が破けているので他の黄表紙を借りました。

「五六日」、「五」のくずし字は特徴的。「六日」がなかったら読めなかったと思います。

「まち毛うけ多る」、変体仮名「毛」ではなく平仮名「ま」かもしれません。

「きづよい」、『③ 情にほだされない。つれない。「ほんに男といふものはなぜそんなに―・いもんだねえ」〈黄表紙・江戸生艶気樺焼〉』

 P9では状差しが右端に描かれていましたが、ここでは目立つようにおおきく「きしやうさし」とあって何通か入っているようです。これは『きしょう ―しやう【起請】③ (男女が)互いにとりかわす,固い約束。また,それを記した文書。「花川といへる女に―を書せ」〈浮世草子・好色一代男3〉』で、女郎が馴染客に誓いを立てた起請文を手渡したもの。

 妾の焼きもちはもちろん演技ですけど、着物姿の線がやわらかくきれいですね。

 

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