P15 東京都立中央図書館蔵
他の黄表紙
(読み)
ゑん二郎 五六 日
えんじろうごろくにち
ぶり尓てうちへ
ぶりにてうちへ
可ゑりけれバ
かえりければ
まち毛うけ多る
まちもうけたる
め可けこゝぞ
めかけここぞ
本うこうの
ほうこうの
志ところと可年て
しどころとかねて
ふくして於ゐ多
ふくしておいた
ぞんぶんを
ぞんぶんを
やき可ける
やきかける
本ん二於とこといふ
ほんにおとこという
ものハ奈ぜ
ものはなぜ
そん奈尓
そんなに
きづよい
きづよい
もん多゛ねへ
もんだ ねぇ
それ本ど二
それほどに
本れ
ほれ
られる
られる
可゛いや
が いや
奈ら
なら
そん
そん
奈いゝ
ないい
於とこ尓
おとこに
うまれ徒可ねへ可゛
うまれつかねぇが
いゝのさま多
いいのさまた
女 郎 も女 郎 多゛
じょろうもじょろうだ
ひとの大 じの
ひとのだいじの
(大意)
艶二郎は五六日ぶりに家へ帰ってきたので、準備して待ち受ける妾はここが奉公のしどころと、かねてから練習しておいた焼きもちの言葉を存分に言った。
妾「ほんに男というものは、なぜそんなにつれないもんなんだろうねぇ。それほどに惚れられるのが嫌なら、そんないい男に生まれなけりゃよかったのさ。また女郎も女郎だ。人の大事な」
(補足)
下が破けているので他の黄表紙を借りました。
「五六日」、「五」のくずし字は特徴的。「六日」がなかったら読めなかったと思います。
「まち毛うけ多る」、変体仮名「毛」ではなく平仮名「ま」かもしれません。
「きづよい」、『③ 情にほだされない。つれない。「ほんに男といふものはなぜそんなに―・いもんだねえ」〈黄表紙・江戸生艶気樺焼〉』
P9では状差しが右端に描かれていましたが、ここでは目立つようにおおきく「きしやうさし」とあって何通か入っているようです。これは『きしょう ―しやう【起請】③ (男女が)互いにとりかわす,固い約束。また,それを記した文書。「花川といへる女に―を書せ」〈浮世草子・好色一代男3〉』で、女郎が馴染客に誓いを立てた起請文を手渡したもの。
妾の焼きもちはもちろん演技ですけど、着物姿の線がやわらかくきれいですね。
0 件のコメント:
コメントを投稿