2024年9月5日木曜日

江戸生艶氣樺焼 その15

P9 東京都立中央図書館

(読み)

女  「せ川 さんとう多

おんな せがわさんとうた


ひめさんのうちを

ひめさんのうちを


きゝ尓徒可王しまし多可゛

ききにつかわしましたが


さつき小まつやで

さっきこまつやで


このもをミかけ

このもをみかけ


まし多可ら

ましたから


う多ひめ

うたひめ


さんハ

さんは


てつきり

てっきり


於王るう

おわるう


ござり

ござり


ませ ふ

ましょう


こびき

こびき


丁  で

ちょうで


可うらい

こうらい


ヤ可゛

やで


本゛く可゛

ぼ くが


さんを

さんを


する

する


そう

そう



ござり

ござり


ますね

ますね

(大意)

女「瀬川さんと歌姫さんのうちを(先約があるかどうか)聞きにつかわしましたが、さっき小松屋で歌姫さんの禿(かむろ)を見かけましたから、歌姫さんはきっと先約があってご都合がお悪いのでござりましょう」

「木挽町で高麗屋が墨河さんをするそうでござりますね」

(補足)

「せ川さんとう多ひめさん」、吉原は江戸町一丁目かどの松葉屋のどちらも実在の遊女。

「小まつや」、同じく仲之町の実在の茶屋。

「このも」、歌姫の禿の名前。

「こびき丁」、森田座の通称。現在の歌舞伎座の前身。

「可うらいヤ」、四代目松本幸四郎の屋号。現在でも「こうらいやっ」とかけるあれです。

「本゛く可゛」、墨河は吉原江戸町一丁目妓楼、扇屋宇右衛門の俳名。吉原の幅ききで、吉原の素人芝居で寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)で工藤祐経(くどうすけつね)をつとめた。そのいきさつで、幸四郎が天明四(1784)年春、森田座の「初暦閙曽我(はつごよみにぎわいそが)」で工藤を演じるのにひっかけて、「墨河する」と洒落た。とものの本にはありました。たったこれだけのセリフを理解するのにも、かなりな知識が必要で、とかく世間話の理解が一番難しい。

 ついたての落款が「宗里画㊞」のようにもみえて、これは俵屋宗里のもの?とものの本にはありました。また六角形の燭台もおしゃれですし、襖の松葉の柄や仏壇or神棚の造作も細やか。茶屋小松屋の一室とはいえ、立派な部屋であります。

 女将の帯は前で結ばれています。


 

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