P18 東京都立中央図書館蔵
(読み)
せい多いをぬりあげや
せいたいをぬりあげや
まちのぎん多゛し尓て
まちのぎんだ しにて
さつとミつ可ミ尓
さっとみずがみに
ゆひ多ぶさを
ゆいたぶさを
つ可むとぢき尓者゛ら\/と
つかむとじきにば らばらと
本どけるよふ二してぶ多れ个る可゛
ほどけるようにしてぶたれけるが
ついぶちどころ王るく可多いき二
ついぶちどころわるくかたいきに
奈つて可ミすき所 でハ奈く
なってかみすきどころではなく
きつけよ者りよと
きづけよはりよと
さ王ぎてよふ\/
さわぎてようよう
き可゛つき个り此 時
きが つきけりこのとき
よつ本゜と者゛可もの多゛と
よっぽ どば かものだ と
いふうき奈すこし
いううきなすこし
者゛可り多ちけり
ば かりたちけり
(大意)
青黛(せいたい)をぬり、揚屋町の銀出しをつかい、サッと軽く水髪に結いあげ、髻(たぶさ)をつかむとすぐにバラバラとほどけるようにしてからぶたれた。しかし、うっかりぶちどころ悪く、たいそう苦しく息もたえだえになり、髪梳(かみすき)どころではなくなり、意識をはっきりさせようとしたり鍼をつかったりと騒ぎになり、やっとのことで気が付き意識がはっきりとした。このときになって、よほどの馬鹿者であるという噂が少しばかりたったのだった。
(補足)
「せい多い」、『せいたい【青黛】② 青い眉墨(まゆずみ)。また,それでかいた眉。
③ 俳優が月代(さかやき)などを青くするために用いる顔料』
「あげやまち」、『揚屋町』吉原五町のひとつ。吉原遊郭は横約330m、縦約250mの四角形。
「ぎん多゛し」、『ぎんだし【銀出し】「銀出し油」の略。「揚屋町の―にて,さつと水髪にゆひ」〈黄表紙・江戸生艶気樺焼〉』『ぎんだしあぶら 【銀出し油】髪の毛につやを出すのにつけるねり油。ビナンカズラのつるの皮を水に浸してねばりを出したもの。びんつけ油よりかたく芳香がある』
「ミつ可ミ」、『みずがみ みづ【水髪】〔「みずかみ」とも〕水油で結い上げた髪。また,水でなでつけただけの髪。「昼に洗ふた―を紅絹の切つ端で結んだまゝ応対したのぢやわな」〈縁•弥生子〉』。毛がバラバラになりやすい。
艶二郎は「中の丁の人高い所尓てぶ多れる徒もり」でしたが、画では天水桶の上の看板には「〜丁目」とあってさて?
艶二郎はたぶさをつかんでなぐられ髪はバサバサ、左の「志゛ま王りのき於ひ」は蹴飛ばしています。
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