2024年9月22日日曜日

江戸生艶氣樺焼 その32

P18 東京都立中央図書館蔵

(読み)

せい多いをぬりあげや

せいたいをぬりあげや


まちのぎん多゛し尓て

まちのぎんだ しにて


さつとミつ可ミ尓

さっとみずがみに


ゆひ多ぶさを

ゆいたぶさを


つ可むとぢき尓者゛ら\/と

つかむとじきにば らばらと


本どけるよふ二してぶ多れ个る可゛

ほどけるようにしてぶたれけるが


ついぶちどころ王るく可多いき二

ついぶちどころわるくかたいきに


奈つて可ミすき所  でハ奈く

なってかみすきどころではなく


きつけよ者りよと

きづけよはりよと


さ王ぎてよふ\/

さわぎてようよう


き可゛つき个り此 時

きが つきけりこのとき


よつ本゜と者゛可もの多゛と

よっぽ どば かものだ と


いふうき奈すこし

いううきなすこし


者゛可り多ちけり

ば かりたちけり

(大意)

 青黛(せいたい)をぬり、揚屋町の銀出しをつかい、サッと軽く水髪に結いあげ、髻(たぶさ)をつかむとすぐにバラバラとほどけるようにしてからぶたれた。しかし、うっかりぶちどころ悪く、たいそう苦しく息もたえだえになり、髪梳(かみすき)どころではなくなり、意識をはっきりさせようとしたり鍼をつかったりと騒ぎになり、やっとのことで気が付き意識がはっきりとした。このときになって、よほどの馬鹿者であるという噂が少しばかりたったのだった。

(補足)

「せい多い」、『せいたい【青黛】② 青い眉墨(まゆずみ)。また,それでかいた眉。

③ 俳優が月代(さかやき)などを青くするために用いる顔料』

「あげやまち」、『揚屋町』吉原五町のひとつ。吉原遊郭は横約330m、縦約250mの四角形。

「ぎん多゛し」、『ぎんだし【銀出し】「銀出し油」の略。「揚屋町の―にて,さつと水髪にゆひ」〈黄表紙・江戸生艶気樺焼〉』『ぎんだしあぶら 【銀出し油】髪の毛につやを出すのにつけるねり油。ビナンカズラのつるの皮を水に浸してねばりを出したもの。びんつけ油よりかたく芳香がある』

「ミつ可ミ」、『みずがみ みづ【水髪】〔「みずかみ」とも〕水油で結い上げた髪。また,水でなでつけただけの髪。「昼に洗ふた―を紅絹の切つ端で結んだまゝ応対したのぢやわな」〈縁•弥生子〉』。毛がバラバラになりやすい。

 艶二郎は「中の丁の人高い所尓てぶ多れる徒もり」でしたが、画では天水桶の上の看板には「〜丁目」とあってさて?

 艶二郎はたぶさをつかんでなぐられ髪はバサバサ、左の「志゛ま王りのき於ひ」は蹴飛ばしています。

 

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