2024年7月4日木曜日

莫切自根金生木 その29

P16 国文学研究資料館蔵

(読み)

て うど

ちょうど


金 川

かながわ


どまりで

どまりで


よう

よう


ござりませ う

ござりましょう


可奈川 ハ

かながわは


可年のゑん可゛

かねのえんが


うるさい可ら

うるさいから


日高 でも

ひだかでも


川 さ起へ

かわさきへ


とま

とま


ろふ

ろう


此 用

このよう


於金 を

おかねを


つけると

つけると


申  ハ

もうすは


むまの

むまの


多め尓

ために


御き

ごき


とう二

とうに


奈り

なり


ます

ます


四五十  里も

しごじゅうりも


多ゞ御於王せ

ただおおわせ


奈されてく多゛さりませ

なされてくだ さりませ

(大意)

(手代)「ちょうど金川(神奈川)泊まりでよろしいのではございませんか」

(萬々)「かな川は金の字がついて縁起が悪いから、まだ日は高いが、川崎へ泊まろう」

(馬子)「このようにお金を背負わせるということは、馬のためのご祈祷になります。四五十里も、ただで背負わせてくださりませ」

(補足)

 かすれていて読みにくい、読めないところが何箇所もあります。ネットや文献にあたって調べてなんとか・・・

 馬子にただでよいといわれて、萬々散財又々失敗。

 

2024年7月3日水曜日

莫切自根金生木 その28

P16 国文学研究資料館蔵

(読み)

と可く思 ふ

とかくおもう


やう二

ように


可年も

かねも


遍ら

へら


ねバ

ねば


ま多\/

またまた


志あんし

しあんし


きょう


大 阪

おおさか


可ら

から


やまと

やまと






こころ


さし

ざし


道\/ も

みちみちも


ついへを

ついえを


可ん可゛へ一 日 尓

かんが えいちにちに


二三 里

にさんり


ぐらひ

ぐらい


徒゛ゝ

ず つ


ふらり\/ と

ふらりふらりと


ゆきける

ゆきける

(大意)

 なにをやっても思うように金がへらないので、またまた考えをめぐらし、京大阪から大和めぐりすることをきめ、道中の費用を(なるべく減らすべく)考えて、一日に二三里ぐらいずつ、ふらりふらりと旅した。

(補足)

「遍らねバ」、変体仮名「遍」(へ)だとおもうのですが。

「道\/も」、「道」のくずし字は特徴的でおぼえやす。変体仮名「遍」にそっくりです。

「二三里ぐらひ徒゛ゝ」、前後のながれから「徒゛ゝ」としましたが、この部分だけを読めといわれたらわからないとおもいます。

 この時代の人たちはこの絵をひと目見てすぐにわかったのでしょうけど、というかわからなかったのはわたしだけかもしれませんが、一番左側にいるのは馬子で馬を引いている、一番後ろが旅のお供の手代、萬々は馬に背負わせたたくさんの金箱の上に腰掛けているという絵だとおもいます。馬はわざとかくして描かなかったのでしょうか?

 

2024年7月2日火曜日

莫切自根金生木 その27

P15 国文学研究資料館蔵

(読み)

よもやモウぬ春んで

よもやもうぬすんで


可へりまし多ろう

かえりましたろう


御可へり

おかえり


奈さり

なさり


ませ

ませ


ふう婦可゛

ふうふが


かへりし

かえりし


こゑを

こえを


きくと

きくと


そのミ者゛可りあしを

そのみば かりあしを


者可り二尓げてゆく

ばかりににげてゆく


それ多可ら

それだから


マアちつと

まぁちっと


者゛可りでも

ば かりでも


とれバよ可つ多

とればよかった


ものを

ものを


王きで

わきで


ぬすん多゛ものまで

ぬすんだ ものまで


於ゐて

おいて


ゆくとハ

ゆくとは


て う志゛やの

ちょうじ ゃの


者ぎへミそを

はぎへみそを


つけ多せんぎ多

つけたせんぎだ

(大意)

(萬々の妻)「おそらくもう盗んで帰ったでしょう。おかえりなさいませ」

 夫婦が帰宅した声を聞き、その身だけで、脚だけで一目散に逃げていった。

(盗人)「こんなことならまぁ、もうちょっとでも盗めばよかったものだ。そばで盗んだものまで置いてゆくとは、長者の脛(はぎ)へ味噌をつけたことになっちまう」

(補足)

「てう志゛やの者ぎへミそをつけ」る、『あり余った上にさらに物を加えること』。有り余る金を持つ萬々の家に、盗んできた小金を置いてきてしまったことの洒落。

 盗人二人、完全な泥棒装束(or忍者装束)ではなく、上半身は単衣そのままのよう。

 

2024年7月1日月曜日

莫切自根金生木 その26

P15 国文学研究資料館蔵

(読み)

あんのごとく

あんのごとく


ぬす人

ぬすびと


大 ぜい

おおぜい


者いりハ

はいりは


者いりし可゛

はいりしが


あまりの

あまりの


大 可゛年ゆへ

おおが ねゆへ


もち

もち


多゛す

だ す


くふうや

くふうや


尓ごしらへ二

にごしらへに


てまどり

てまどり


よも

よも


本の

ほの


\゛/と

ぼ のと


あけ

あけ


けれバ

ければ


とることハ

とることは


於ゐて

おいて


よそ

よそ


尓て

にて


ぬすミし

ぬすみし


金 者゛こ

かねば こ


いるい

いるい


どうぐ

どうぐ


までもつて

までもって


で尓く

でにく


く奈りしや

くなりしや

(大意)

 案じていたとおりに、盗人が大勢入ることは入ったのだが、あまりの大金(おおがね)のため、持ち出す方法や荷ごしらえに手間取り、夜もほのぼのとあけてしまい、取ることはあきらめ、よそで盗んだ金箱・衣類・道具まで持って出にくくなってしまった。

(補足)

「よそ尓てぬすミし」、前頁P14の左下の「尓本ひを可き\/ぬすミ尓」の「ぬす」がかすれていてよくわかりませんでしたが、この頁の「ぬす」が同じようなかたちなので、P14のところは「ぬす」で間違いがなさそうです。

 帰宅した萬々の障子にうつる姿の影が印象的です。そしてそれをみてあわてる盗人。当時のおおくの絵師たちが錦絵・浮世絵でこの影の手法を使用しています。

 有名な葛飾応為「吉原格子先之図」です。

 光と影が見事です。