P28P29 国文学研究資料館蔵
P28
(読み)
可くてミうけの多゛ん可うきハまれハあす
かくてみうけのだ んごうきわまればあす
可らミせを引 やんすやつさも川さの
からみせをひきやんすやっさもっさの
いさくさ奈く吉 日 を
いさくさなくきちじつを
ゑらミ川ゝかのいつすん
えらみつつかのいっすん
さきハやミ多゛尓よらい
さきはやみだ にょらい
御らいく王うまし\/
ごらいご うましまし
ごくらくつうどへ引 とり
ごくらくつうどへひきとり
給 ふく可゛い十 年 の
たもうくが いじゅうねんの
くるしミ一 じ尓
くるしみいちじに
めつしきやくの
めっしきゃくの
うて奈尓
うてなに
いざ奈ハれ
いざなわれ
く王多く
か たく
をいづる
をいずる
与つ天゛可ご
よつで かご
のりのミち
のりのみち
をぞいそ
をぞいそ
ぎ行 引 三 重
ぎゆくひきさんじゅう
(大意)
かくて身請けの話し合いはすべてまとまり、明日から見世にでることはなくなった。あれやこれやのもめごともなく、吉日を選みつつ、かの一寸先は闇だ如来がおいでになられ、極楽通土へお引き取りくだされた。苦界十年の苦しみは一瞬にしてなくなり、客の高楼に誘われ連れてゆかれべく、苦海を出る四つ手駕籠、極楽彼岸へ導く道を急ぎゆく。
(補足)
「いさくさ」、『① もめごと。いざこざ。「きのふの―はどうなりました」〈滑稽本・浮世風呂•4〉② 文句。苦情。言い分。「なに,―があるもんだ」〈滑稽本・東海道中膝栗毛•7〉』
「うて奈」、『うてな【台】
① 高殿(たかどの)。高楼(こうろう)。
② 〔蓮(はす)のうてなの意から〕蓮台(れんだい)。「はちす葉を同じ―と契りおきて」〈源氏物語•鈴虫〉』
「く王多く」、『かたく くわ―【火宅】
〘仏〙〔法華経譬喩品〕三界に平安のないことを火事にあった家にたとえた語。苦に満ちた世界としてのこの世。現世。娑婆(しやば)』ここでは苦界、遊里の意。
「引三重」、『② 音楽の奏法で用いる語。㋑ 三味線の手の一。浄瑠璃や長唄で,段や場面の終わりや語り出しなどに用いる。愁い三重・大三重など種々ある。
③ 歌舞伎の下座音楽の一。合方を主とし,唄はなく,もっぱら効果音楽として用いる。愁い三重・忍び三重・対面三重など』ここは浄瑠璃の曲節ふうに読んでくれということ、とものの本にはありました。
小判にむらがる遣手婆や亭主、若衆だが、ひとり如来を拝むのは身請けがまとまり、明日から見世に出なくてよくなった花魁。
0 件のコメント:
コメントを投稿