2024年3月23日土曜日

九替十年色地獄 その57

P28P29 国文学研究資料館蔵

P28

(読み)

可くてミうけの多゛ん可うきハまれハあす

かくてみうけのだ んごうきわまればあす


可らミせを引 やんすやつさも川さの

からみせをひきやんすやっさもっさの


いさくさ奈く吉 日 を

いさくさなくきちじつを


ゑらミ川ゝかのいつすん

えらみつつかのいっすん


さきハやミ多゛尓よらい

さきはやみだ にょらい


御らいく王うまし\/

ごらいご うましまし


ごくらくつうどへ引 とり

ごくらくつうどへひきとり


給 ふく可゛い十  年 の

たもうくが いじゅうねんの


くるしミ一 じ尓

くるしみいちじに


めつしきやくの

めっしきゃくの


うて奈尓

うてなに


いざ奈ハれ

いざなわれ


く王多く

か たく


をいづる

をいずる


与つ天゛可ご

よつで かご


のりのミち

のりのみち


をぞいそ

をぞいそ


ぎ行 引 三 重

ぎゆくひきさんじゅう

(大意)

 かくて身請けの話し合いはすべてまとまり、明日から見世にでることはなくなった。あれやこれやのもめごともなく、吉日を選みつつ、かの一寸先は闇だ如来がおいでになられ、極楽通土へお引き取りくだされた。苦界十年の苦しみは一瞬にしてなくなり、客の高楼に誘われ連れてゆかれべく、苦海を出る四つ手駕籠、極楽彼岸へ導く道を急ぎゆく。

(補足)

「いさくさ」、『① もめごと。いざこざ。「きのふの―はどうなりました」〈滑稽本・浮世風呂•4〉② 文句。苦情。言い分。「なに,―があるもんだ」〈滑稽本・東海道中膝栗毛•7〉』

「うて奈」、『うてな【台】

① 高殿(たかどの)。高楼(こうろう)。

② 〔蓮(はす)のうてなの意から〕蓮台(れんだい)。「はちす葉を同じ―と契りおきて」〈源氏物語•鈴虫〉』

「く王多く」、『かたく くわ―【火宅】

〘仏〙〔法華経譬喩品〕三界に平安のないことを火事にあった家にたとえた語。苦に満ちた世界としてのこの世。現世。娑婆(しやば)』ここでは苦界、遊里の意。

「引三重」、『② 音楽の奏法で用いる語。㋑ 三味線の手の一。浄瑠璃や長唄で,段や場面の終わりや語り出しなどに用いる。愁い三重・大三重など種々ある。

③ 歌舞伎の下座音楽の一。合方を主とし,唄はなく,もっぱら効果音楽として用いる。愁い三重・忍び三重・対面三重など』ここは浄瑠璃の曲節ふうに読んでくれということ、とものの本にはありました。

 小判にむらがる遣手婆や亭主、若衆だが、ひとり如来を拝むのは身請けがまとまり、明日から見世に出なくてよくなった花魁。

 

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