2024年3月5日火曜日

九替十年色地獄 その39

P19 国文学研究資料館蔵

(読み)

本んとうのちこくてハ

ほんとうのじごくでは


うそをつい多ものハ

うそをついたものは


ゑんま王うミづ可ら

えんまおうみずから


志多をぬき給 ふ

したをぬきたもう


此 いろぢごく

このいろじごく


尓てハこつち

にてはこっち


可らうそを

からうそを


ついてむ可ふの

ついてむこうの


志多のやう奈

したのような


ものをぬき多可゛る

ものをぬきたが る


志可しこれもぬ可

しかしこれもぬか


るゝ本うよりぬく

るるほうよりぬく


本う可゛くるしミ

ほうが くるしみ


奈りこれを

なりこれを


抜舌(者つぜつ)ぢごくといふ

   ばつぜつ じごくという 

(大意)

 本当の地獄では、うそをついた者は、閻魔大王みずから舌をお抜きになられる。この色地獄では、こっちから嘘をついて、向こうの舌のようなものを抜きたがる。しかしこれも、抜かれるほうより、抜くほうが苦しみである。これを抜舌(ばつぜつ)地獄という。

(補足)

 ますます廓内のしきたりをしらないとわからないことばかりになります。

三つ布団の上にはすでに一枚置かれていて、遊女が客の二枚目の舌を抜いているところ。

 初めて遊んだ遊女をもう一度呼んで遊ぶことを「裏を返す」という。そして同じ遊女を揚げて遊ぶ三度目のことを「三会目」といい、これからを「馴染(なじ)み」といって床入りの運びとなる。このときの祝儀の金が床花で、ここでは三枚の舌を抜いたので三両となってつぎの話につながります。


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