序 国文学研究資料館蔵
(読み)
命 といふ字ハ誰可゛書 多素 福 ぬいで見せさんせ嗚呼あんま者り
いのち じ 多 可い しろむく あゝ
いのちというじはたが かいたしろむくぬいでみせさんせあああんまはり
けんへきも百 万 両 の分限 者 も大 切 奈ハ命 なり志んぞ命 を總
ひやくまんりやう ぶげんしや 多いせ川 あげ
けんぺきもひゃくまんりょうのぶげんしゃもたいせつなはいのちなりしんぞいのちをあげ
角 も助 六 可゛多め丹苦勞 を春れバ命 をちゞむる古とあり命 あ川
満起 春けろく くろう
まきもすけろくが ためにくろうをすればいのちをちじむることありいのちあっ
てのも能多゛ね奈禮バ金 をの者゛さんより命 をの者゛さん尓志可じ
てのものだ ねなればきんをのば さんよりいのちをのば さんにしかじ
(大意)
命という字は誰が書いた、白無垢脱いで見せさんせ。あぁ、按摩針療治の者たちも百万両の大金持ちも、大切なのは命である。しんぞ命を総角(あげまき)も、助六がために苦労をすれば、命を縮めることもある。命あってのものだから、金を稼いで貯めるより命を延ばすに越したことはあるまい。
(補足)
表紙は表題があるだけなので省略します。長い題名「延命長尺御誂染長壽小紋」は「えんめいながじゃくおあつらえちょうじゅこもん」。享和二年(1802)蔦屋重三郎刊。題名は誂え染め丁子小紋のもじり。
出だし「命といふ字ハ誰可゛書多」は「乱髪夜編笠(みだれがみよるのあみがさ)」(寛保二年(1742)江戸中村座で初演。三世、十寸見河東作曲)の「露を命の置き所、命という字は誰が書いた、白無垢脱いで見せさんせ、あああんまりな面憎や」のもじり。この序の語り調子が芝居序幕の音曲風。
「けんへき」、『けんぺき【痃癖・肩癖】〔「けんべき」「けんびき」とも〕
① 肩凝りのこと。また,頸から肩にかけてのあたり。「眼の病は―の凝りよりも起こるといへば」〈読本・南総里見八犬伝•8〉
② 肩が凝るほどの心配ごと。「よし町の―に成るいろは茶屋」〈誹風柳多留•6〉
③ 〔肩凝りを治すところから〕あんま。「艾(もぐさ)も―も大摑みにやつてくれ」〈浄瑠璃・新版歌祭文〉』
「志んぞ命を」、よくみたら「で」はなく「ぞ」でした。また『しんぞ命を揚巻の
「しんぞ」は「神ぞ・真ぞ」で、神かけて。本当に。「命を上ぐ」と「揚巻」の掛詞』とありました。そして『江戸歌舞伎の代名詞でもある助六ですが、実は元々は上方・京都の人物。京都の助六という男性と島原の遊女・総角(あげまき)との心中が、一中節となって江戸に流入しました。これを二代目市川団十郎が曽我物の要素を取り入れて改作を重ね、
現在の歌舞伎十八番の原型となる江戸の助六像をつくりあげたのです』とあって、もうこのあたりが、わたしの限界であります。降参!
「助六」三行半『富士と筑波の山間の 袖なりゆかし君ゆかし
しんぞ命を揚巻の これ助六が前わたり 風情なりける次第なり』と謳われます。
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