序 国文学研究資料館蔵
(読み)
命 ハ食 尓あり餺 飥餅 ハ棚 尓あり命 ハ養 生 尓あり養
めい しよく 本゛多もち 多奈 いのち ようじやう よう
めいはしょくにありぼ たもちはたなにありいのちはようじょうにありよう
生 ハ心 尓阿り一 心 命 の花繍 能ろく奈るのハいらぬもの長
じやう こゝろ いつしんいのち いれ本゛くろ 奈可゛く
じょうはこころにありいっしんいのちのいれぼ くろのろくなるのはいらぬものなが く
て王るい可゛鼻 の下 奈可゛くてよ以可゛命 なり个りさよ能中 山 餳
者奈 し多 あめ
てわるいが はなのしたなが くてよいが いのちなりけりさよのなかやまあめ
の餅 より甘 口 奈此 草 紙をミて笑 ふて命 越の者゛し玉 へ登
もち あまくち このそうし 和ら
のもちよりあまくちなこのそうしをみてわろうていのちをのば したまへと
筆 能命 毛奈可゛\゛/しくかきつけ侍 り
ふで いのちげ ハべ
ふでのいのちげなが なが しくかきつけはべり
享 和二年 壬 戌 春 山 東 京 傅 戯記㊞
きょうわにねんみずのえいぬはるさんとうきょうでんぎき
(大意)
命は食にある。ぼた餅(餺飥餅)は棚にあるが、命は養生にあり、養生は心にある。一 心命と彫った花繍(入れ黒子)は女に甘くなり、いらぬものだ。長くて悪いは鼻の下、長くて良いのは命である。小夜(さよ)の中山の水飴餅より甘口なこの草紙を読んで笑って命をおのばしくださればと、筆の命毛(いのちげ)のように長々と書きつけさせていただいた。
享和二年壬戌春 山東京傅戯(たわむれに)記(しるす)㊞
(補足)
「餺飥餅(本゛多もち)」、 餺飥(ハクタク)。小麦粉を練って作った食品。
「中山餳」、あめ。水飴。サトウキビなどから作った甘味料
「戌」と「戊」、よく間違えてしまいます。「戊(ぼ)」は十干の5番目、つちのえ。「戌(じゅつ)」は十二支の11番目、いぬ。
「小夜の中山」、静岡県掛川市佐夜。遠州七不思議のひとつ「夜泣石と子育飴」で有名。名物水飴餅。
「命毛」、『筆の穂の一番長い毛。筆の芯(しん)になる毛。力毛。』
「享和」(1801年2月5日〜1804年2月11日)、『寛政の後,文化の前。光格天皇の代。将軍は徳川家斉(いえなり)』
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