P22P23 国文学研究資料館蔵
P22
(読み)
む个んぢごくといふハこのいろぢごく尓
めけんじごくというはこのいろじごくに
うつてつけ多るぢごく尓てその可ミ
うってつけたるじごくにてそのかみ
梅 可゛へより此 ぢごく者しまりいし尓もせよ
うめが えよりこのじごくはじまりいしにもせよ
金 尓もせ与といふ多ことバののこりて
かねにもせよというたことばののこりて
女 郎 のミふんさうをう尓いし尓も可ぎらず
じょろうのみぶんそうおうにいしにもかぎらず
金 にも与らずて うづ
かねにもよらずちょうず
者ちをくめんして
ばちをくめんして
可つて志多゛い尓
かってしだ いに
つく事 奈り
つくことなり
(大意)
無間地獄というのは、この色地獄の中でももっともぴったりの地獄で、その昔、梅が枝よりこの地獄は始まった。「石にもせよ金にもせよ」とは浄瑠璃のセリフだが、女郎の身分相応に言いかえれば、「石にも限らず金にもよらず」に、(無間の鐘に見立て)工面した手水鉢を、自分のおもうまま好き勝手につくことである。
(補足)
文章全体どこで区切るのか、とても悩みます。
「その可ミ」、『そのかみ 3【其の上】
① 過ぎ去ったその時。そのむかし。「―関白にならせ給へる二位中将殿と」〈平家物語•3〉』
「いし尓もせよ金尓もせ与」、浄瑠璃「ひらかな盛衰記」四段目のセリフ。価値があるものにせよ、価値がないものにせよ。
『『ひらかな盛衰記』に、遊女「梅ヶ枝」が、「無間(むけん)の鐘」になぞらえた手水鉢を柄杓(ひしゃく)で叩く場面があります。「無間の鐘」とは、撞(つ)くと現世の富と引き換えに来世は無間地獄に落ちるという伝説の遠州七不思議の1つ。江戸期の人々には「無間の鐘」といえば遊女「梅ヶ枝」と手水鉢の情景が連想され、文楽や歌舞伎や落語、歌川広重や鈴木春信の浮世絵など、様々に表現され人気を博したようです。』とありました。
この梅が枝のはなしは「箱入娘面屋人魚 その28」でも使われていました。
京伝もこの場面が好きだったのでしょうけど、江戸庶民にすぐに伝わるはなしでもあったのでしょう。箱入娘の場面では石菖(せきしょう)が噴水の水のようだとありましたが、ここのは万年青(おもと)のようにみえます。
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