2024年3月30日土曜日

延命長尺御誂染長壽小紋 その3

P1 国文学研究資料館蔵

(読み)

ぜ尓かね尓毛

ぜにかねにも


かへられぬもの

かえられぬもの


ハいのち奈り

はいのちなり


よ能中 尓大

よのなかにたい


せ川奈もの

せつなもの


をいのち可ら

をいのちから


二者゛んめといふ

にば んめという


さ春れバ命

さすればいのち


本どのた可ら

ほどのたから


ハ奈しそ乃

はなしその


いのちといふ

いのちという


ものどこから

ものどこから


でるぞといふ

でるぞという


丹てんちざう

にてんちぞう


く王の神 お

か のかみお


本くのいのち

おくのいのち


を仕入 てと

をしいれてと


本り天 の一 丁

おりてんのいっちょう


め尓みせをい

めにみせをい


多゛していの

だ していの


ちのと以や

ちのといや


を志玉 ふ

をしたまう

(大意)

 銭や金に代えられぬものは命である。世の中に大切であるものを、命から二番目(に大切なもの)であるという。なので命ほどの宝はない。その命というものはどこから出てくるのかというと、天地造化の神が多くの命を仕入れて、忉利天の一丁目に店を出し、命の問屋をされてらっしゃる。

(補足)

「と本り天」、『〔梵•Trāyastriṃśa〕六欲天の下から二番目の天。帝釈天がその中心に住み,周囲の四つの峰にそれぞれ八天がいる。三十三天』

「いのち可ら」、「本どのた可ら」、どちらも「可ら」が一文字に見えてしまいます。この数行後に「ものどこから」とこちらはひらがな「から」。

「志玉ふ」、普通は「給ふ」で「給」のくずし字は右回りに2回クルクルと螺旋になりますが、ここでは「玉」そのままです。この黄表紙ではすべてこの「玉ふ」が使われます。

 帳場の囲いがしゃれてます。横方向の材木は定規などを使ってまっすぐになっていますけど、縦方向の材木はわざと定規を使わずに、命の長い部分は定規でまっすぐ、筆そのままで引いています。結果、なんとも現実感がかもしだされています。うまい。

 

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