下P10 東京都立図書館蔵
(読み)
春ゞめのね尓のこりもゝの奈可奈る
すずめのねにのこりもものなかなる
さ年可多尓ミゝをと川多る者奈の
さねかたにみみをとったるはなの
波る御こさ満可゛多のおねむけ
はるおこさまが たのおねむけ
さましやんらめで多のいち可
ざましやんらめでたのいちが
さ可へ多
さかえた
「やれ\/大 奈もゝ可゛奈可゛
やれやれおおきなももが なが
連てきもふし多
れてきもうした
もひと川奈可゛れ多ら
もひとつなが れたら
おちゞ尓
おじじに
おましよ
おましょ
春 朗 画
しゅんろうが
京 傳 作
きょうでんさく
(大意)
雀の鳴き声「チュウ」に残っている。桃の中の種(さね)方のとんでも噺、
そんな突拍子もない黄表紙が正月新春に、御子様方のお眠気ざましに
「桃太郎噺」でなんとなんと売れ行きめでたく、本屋はにぎわった。
「やれやれ、大きな桃が流れて来ましたよ。もう一つ流れてきたら
お爺にたべさせましょう」
(補足)
「もゝの奈可奈る」、「も」はかすれてしまっていて、はなしの内容を知っていないと読めません。「奈」二つ目が変なかたちですが、そのすぐ左に「奈」があって、似ているといえばにてます。
「ミゝをと川多る者奈の波る」、諺『耳をとって鼻をかむ』(耳をそぎとって鼻をかむことから突拍子もないことをするたとえ)のもじり。正月はいろいろな本の新版が発売されるので江戸庶民は楽しみにしていた。平仮名「は」でもよかったのですが、変体仮名「波」(は)としました。
「御こさ満可゛多のおねむけ」、変体仮名「於」(お)は平仮名「か」にしかみえません。
お子様向けの「豆本」など、最後のむすびは必ず「めでたし\/\/\/\/」で、ここでもそのきまり文句で結びとしています。
「きもふし多」、「ふ」の次にもう一文字変体仮名「个」ような文字があるように見えるのですが、わかりません。
「京傳作」のほうが「春朗画」の何倍もでかい。春朗はまだ北斎かけだしの頃の号。力関係でこうだったとしても、作者の名がいかにもで、大きいような気がします。
おしまい。