2022年8月2日火曜日

あさ可゛本物語(木村文三郎) その13

P10 国立国会図書館蔵

P11前半

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(読み)

X可奈しミ奈げ起春で尓大 ゐ川 へミを

 かなしみなげきすでにおおいがわへみを


奈げんとせしところへとく右衛門者せつけ

なげんとせしところへとくえもんはせつけ


やう\/しをとゞめあそ二郎 可゛をしへのごと

ようようしをとどめあそじろうが おしえのごと


く王可゛ちし本をもつてめぐ春りをの満春

くわが ちしおをもってめぐすりをのませ


連バ多ちまちぜんく王い奈し多り个るあそ

ればたちまちぜんか いなしたりけるあそ


(大意)

悲しみ嘆き、まさしく大井川へ身を

投げようとしているところへ徳右衛門がかけつけ

やっとのことで死をとどめることができました。阿曽二郎が教えてくれたとおり

わが血潮と一緒に目薬をのませた

ところたちまち全快したのでした。阿曽(二郎)


(補足)

「をしへのごとく」、「ごと」は合字。

「の満春連バ」、ここの変体仮名「満」(ま)と「多ちまち」の変体仮名「多」(た)をくらべるとほとんど同じかたちです。変体仮名「多」のかたちはたいてい「さ」の横棒をなくしたものですがここのかたちのような変体仮名「多」(た)もあります。

「王可゛ちし本をもつて」、あらすじを調べていなければよくわからないところです。徳右衛門は深雪の身投げを止めたあと川岸でぶすりと小刀で自分の腹を刺し、その血潮というわけです。

 徳右衛門さんなんだか任侠の仁義を切っているみたいにみえます。小刀をさしています。

 

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