P16前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵
(読み)
第 三 十 於菊 虫
多゛以さん志゛うおきくむし
だ いさんじゅうおきくむし
皿屋 しきのお菊 むしハおきく可゛怨 念 虫 と奈りしと云 伝
さらや きく 於ん袮んむし
さらやしきのおきくむしはおきくが おんねんむしとなりしといいつた
ふ春へ天可ゝる怨 のことゞもハ其 所 尓止 り天年 越ふる
うらミ 曽のところ とゞ満 とし
うすべてかかるうらみのことどもはそのところにとどまりてとしをふる
尓随 ひ草 木 鳥 虫 ホ 尓化 し天永 く怨 越ミ春る
死多 さうもくとりむしとう くハ 奈可゛ うらミ
にしたいそうもくとりむしとうにか してなが くうらみをみする
(大意)
第三十於菊虫
皿屋敷の於菊虫はおきくの怨念が虫となったものと云い伝えれてい
る。すべてこのような怨みなどというものはその場所にとどまって、年がたつ
に従って草木や鳥や虫などに化けて永く怨みをみせる(ことが多い。)
(補足)
「皿屋しき」、「屋」が偏で「し」が旁の一文字の漢字のようです。
表題では変体仮名「於」(お)ですが、本文では「お菊むしハおきく可゛」と平仮名。
「怨」、振り仮名「うらミ」の「うら」がニョロニョロしていて判別しにくい。
「ことども」、「こと」は合字、「ど」がくずしすぎで読めません。
「随ひ」、振り仮名が「志多」で「可゛」を忘れたのか、「随」の次に小さく「可」があるようにもみえて「したがい」と読むのか?しかし「有」のくずし字は次の次の行に「有」がありますが、
「月」の部分をくずした最後に「一」がつきます。なので振り仮名に「可゛」を忘れたと判断。
ちなみに「月」のくずし字はここにあるようにグニャグニャしたものではなく、「月」そのままのかたちか「同」のくずし字に似たかたちです。
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