2022年1月10日月曜日

桃山人夜話巻四 その18

P10後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

西 嶋 といふ所  あり山 の春楚尓夕 ぐれ与り二 ツの

尓しじ満   ところ  や満    ゆふ    ふ多

にしじまというところありやまのすそにゆうぐれよりふたつの


火出 天狂 ひ夜中 尓ハ其 火合  し天一 ツと奈り天

ひいで くる よ奈可  曽のひ可゛つ  ひと 

ひいでてくるいよなかにはそのひが っしてひとつとなりて


ハうせ个り里 人 も何 の火と云 こと越志ら須゛往 来

     さとびと 奈尓 ひ いふ       王うら以

はうせけりさとびともなにのひということをしたず おうらい


の旅 僧 見天い多ち奈りといへりい多ちの毛ハよ

 里よ曽うミ              け

のりょそうみていたちなりといえりいたちのけはよ


尓入 天ハ光 る毛の奈りと楚゛鷺 も是 と同 じ

 いり  ひ可        さぎ これ 於奈

にいりてはひかるものなりとぞ さぎもこれとおなじ


(大意)

西島というところがある。山のすそに夕暮れよりふたつの

火があらわれて狂ったように動き、夜中にはその火は合体してひとつとなり

消えてしまった。里の人も何の火であるか知らなかった。街道を

旅する僧が見て「あれはイタチである」と言った。イタチの毛は夜

になると光るものだという。鷺もこれと同様のことである。


(補足)

「山の春楚尓」、「そ」はたいていは変体仮名「曽」(そ)ですがここの変体仮名も使われます。最終行「毛の奈りと楚゛」。

 巻四ともなると話も出尽くして、作者が苦労しているのがわかります。鷺が光るのがイタチと同じだなんて落としどころがつまりません。五位鷺の名前の由来のほうがよほどおもしろい。

 

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