P10後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵
(読み)
西 嶋 といふ所 あり山 の春楚尓夕 ぐれ与り二 ツの
尓しじ満 ところ や満 ゆふ ふ多
にしじまというところありやまのすそにゆうぐれよりふたつの
火出 天狂 ひ夜中 尓ハ其 火合 し天一 ツと奈り天
ひいで くる よ奈可 曽のひ可゛つ ひと
ひいでてくるいよなかにはそのひが っしてひとつとなりて
ハうせ个り里 人 も何 の火と云 こと越志ら須゛往 来
さとびと 奈尓 ひ いふ 王うら以
はうせけりさとびともなにのひということをしたず おうらい
の旅 僧 見天い多ち奈りといへりい多ちの毛ハよ
里よ曽うミ け
のりょそうみていたちなりといえりいたちのけはよ
尓入 天ハ光 る毛の奈りと楚゛鷺 も是 と同 じ
いり ひ可 さぎ これ 於奈
にいりてはひかるものなりとぞ さぎもこれとおなじ
(大意)
西島というところがある。山のすそに夕暮れよりふたつの
火があらわれて狂ったように動き、夜中にはその火は合体してひとつとなり
消えてしまった。里の人も何の火であるか知らなかった。街道を
旅する僧が見て「あれはイタチである」と言った。イタチの毛は夜
になると光るものだという。鷺もこれと同様のことである。
(補足)
「山の春楚尓」、「そ」はたいていは変体仮名「曽」(そ)ですがここの変体仮名も使われます。最終行「毛の奈りと楚゛」。
巻四ともなると話も出尽くして、作者が苦労しているのがわかります。鷺が光るのがイタチと同じだなんて落としどころがつまりません。五位鷺の名前の由来のほうがよほどおもしろい。
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