2021年8月28日土曜日

桃山人夜話巻一 その15

P6前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

恐 れ天里 の山 蔭 尓埋  天塚 と奈し本こら越

於曽  さと やま可げ うづめ つ可   

おそれてさとのやまかげにうずめてつかとなしほこらを


多天ゝ今 尓狐  の杜 と云 能 狂  言 のこんく王以ハ是

   いま きつ年 もり いふのうきやう个ん       これ

たてていまにきつねのもりというのうきょうげんのこんかい はこれ


尓も登づきて人 多る者 の悪 きことゝ志り天悪

      ひと  もの あし       あし

にもとずきてひとたるもののあしきこととしりてあし


きミち尓入るハ畜 生 のこゝ路と同 様 のふるまひ

    い  ちくせい     とうやう

きみちにいるはちくしょうのこころとどうようのふるまい


(大意)

恐れ、里の山かげに埋めて塚をつくり祠(ほこら)を

建てて現在は狐の杜と言われている。能狂言の「吼噦(釣狐)」はこれ

にもとづいてつくられたもので、「人」である者ならば悪と知りながら悪

の道に入ることは畜生の心と同様の振る舞い

(補足)

「恐れ天」、「恐」のくずし字は「思」に似てます。「思」は「心」の上が「ツ」のようなかたちで「恐」は「旧」のようなかたち。

「多天ゝ」、「天ゝ」がつながってわかりにくいですが「てゝ」と読めます。「て」の変体仮名「天」は平仮名「て」の曲がりの部分が波打つような形と「ゝ」+「く」のような形の2種類あります。1行目にある変体仮名「天」は後者、ここの変体仮名「天」は前者です。

「今」のくずし字がわかりにくいです。よくある形は「彡」+「丶」のようなかたち。

「吼噦(こんかい)(釣狐(つりぎつね))」、釣狐はわかりますが、「吼噦」は今回知った次第。

 

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