P1前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵
(読み)
桃 山 人 夜話巻 第 壹
とうざんじんやわまきだいいち
第 一 白 蔵 主
多゛いいち者くざう春
だ いいちはくぞうす
夫 奇怪 ハ己 与里む可へ天又 己 与り滅 せり去 バ有 ん
曽れきく王い をのれ ま多をのれ めつ され あら
それきかい はおのれよりむかえてまたおのれよりめっせりさればあらん
可登疑 ふ時 ハ可奈ら須゛顕 連奈し登観 春゛る時 ハ更 尓
う多可゛ とき あらハ くハん とき さら
かとうたが うときはかならず あらわれなしとかん ず るときはさらに
阿ること那しをのれ尓毛の春ごしと思 へ者゛傘 の婦る
おも 可ら可さ
あることなしおのれにものすごしとおもえば からかさのふる
(大意)
桃山人夜話巻第壹
第一白蔵主
そもそも「奇怪」とは、自分の心の持ちようで現れたり消えたりするものである。そうであるから
現れるのではなかろうかと疑うときは必ず見えてしまうし、そうでないと楽観すればそのようなことは何事もない。自分に何か恐ろしいと思う気持ちがあれば、傘の古い(骨も)
(補足)
変体仮名「者」(は)のかたちは、「む」の後半がダラリと右に流れたような形。
変体仮名「多」(た)のかたちは、平仮名「さ」の横棒がなくなった形。
変体仮名「春」(す)のかたちは、「す」+「て」or「十」+「と」のような形。
変体仮名「曽」(そ)と平仮名「そ」はほとんど同じなのですが、よくみると一画目がことなっていますので、このBlogでは判別できる限り区別します。
「己与里」「己与り」、続けて出てきてますが、一方は変体仮名、もう一方は平仮名。
変体仮名「天」(て)のかたちは、平仮名「て」の曲線部分が波線になります。
変体仮名「登」(と)、「癶」(はつがしら)のかたちがそのまま簡略化されて「 㣺」。下部は小さな「こ」。
「疑」も「顕」のくずし字はなんとなく元の形が残っているような気がしますが、練習してもかけそうにありません。
変体仮名「須」(す)、ここでは「゛」付。「春」(す)とともに頻出します。このあとすぐに「春゛」があります。
変体仮名「尓」(に)も頻出度大。英小文字筆記体の「y」のようなかたちもよくあり次行に出てきてます。
「阿る」、ここの「る」は変体仮名「留」です。変体仮名「阿」が「何」に見えてしまって「何可」と間違えてしまいます。
変体仮名「那」(な)は変体仮名「奈」「な」とともによくでます。
変体仮名「毛」(も)、「もの」というふうに使われることが多い。小さな文字2文字で「こち」と読めないこともないようなかたち。
変体仮名「婦」(ふ)、特徴的な形なので覚えやすい。