P.179 最初〜最後まで。「飯能市立博物館所蔵平沼家文書」
(読み)
当 村 之義者秩 父郡 名栗 谷
とうそんのぎはちちぶぐんなぐりやつ
と唱 ひ候 程 之山 間 二而夏中
ととないそうろうほどのさんかんにてかちゅう
迚 も兎角 冷 氣勝 二而作 物
とてもとかくれいきまさりにてさくもつ
実 法 無甲斐 殊 二右 畑 之義
じっぽうかいなくことにみぎはたけのぎ
入 間川 水 源 端 二而石 砂 交 り
いるまがわすいげんはしにていしすなまじり
之薄 地故 差 当 引 請 人 も
のうすちゆえさしあたりひきうけにんも
無之 建 家之儀も困 窮 人 故
これなくたてやのぎもこんきゅうにんゆえ
年 来 修 復 も不差加 朽 腐
ねんらいしゅうふくもさしくわえずくちくさり
候 儘 悉 ク住 荒 此 上 手入 可致
そうろうままことごとくすみあれこのうえていれいたすべき
(様 無 之)
さまこれなく
(大意)
当村については秩父郡名栗谷(なぐりやつ)
といわれるほどの山奥にあり、夏の間
でも気温が低いことが多いため作物を
育てようにもその甲斐がありません。特に畑については
入間川の水源近くのため石砂が混じり
耕作に適さぬためそこを当面引き受けようと
する人もいません。家屋についても貧乏人のため
一年を通じて手入れすることもなく朽ち
果てるままほとんど荒れている状況です。もはや手入れをする
(様子もなく)
(補足)
今まで使われてこなかった初見の漢字がたくさんあります。
「唱い」(とない)としましたが、(いい)でもよさそう。
「夏中」、春夏秋冬は重要くずし字ですが、「夏」のくずし字が難しい。辞書をのぞくともっとくずされた字があってますます難。
「兎角」、セットで覚える。
「冷気」、「冷」で悩んでしまいました。
「実法」(じっぽう)、実際の方法、様子。
「水源端」、「源」が「冫」になってますがそんなこと気にしないのでしょう。「端」もジッっと見ているとそれらしく見えてくるのですが。
「薄」、辞書をみるとありました。ちょっとわかりずらい。
「修復」、「復」の名残があるくずし字と、ここのように右側が「甘」+「又」のようなくずし字もあります。
「加」、「口」が「、、」のよう。
「窮」「腐」「毀」などはたいてい楷書にちかい字体のことが多い。画数がおおいのと、普段使われない漢字だからでしょうか?
「悉く」、辞書のくずし字は読めるのですが、ここのは「憲」のように見えてしまいます。
山奥の名栗村の生活状況を垣間見ることができます。
その生活の厳しさは、その状況に我が身を置いてみないとわからないくらいのものだったろうとおもいます。想像すらできない生活の毎日、言葉をなくします。
0 件のコメント:
コメントを投稿