P.17 5〜9行目まで。「飯能市立博物館所蔵平沼家文書」
(読み)
太次郎 殿 罷 出申 様 、各々 様 方
たじろうどのまかりでもうすさま、おのおのさまがた
本 と被仰 致 方 無之 、村 方 之者
ほんとおおされいたしかたこれなく、むらかたのもの
十 五日 帰宅 仕 候 得共 、いま多゛両 人 程
じゅうごにちきたくつかまつりそうらえども、いまだ りょうにんほど
不帰 、定 目而此 者 弐人 岩 鼻 表 江
かえらず、さだめてこのものふたりいわはなおもてへ
欠 込 候 哉、又 ハ欠 落 致 候 哉、
かけこみそうろうや、またはかけおちいたしそうろうや、
(大意)
(滝之助殿に先んじて)太次郎殿が申すには、皆様が
本当の気持ちをおっしゃられて(お互いの立場上)どうしようもございません。村民は
15日に帰宅致しましたが、いまだに二人程が
戻っておりません。きっとこの二人は岩鼻代官所へ
駆け込み訴えているのでしょうか、または逃走してしまっているのでしょうか。
(補足)
「申様、各々様方」、「様」の偏と旁がはなれて、今までの筆跡となんか異なっている感じがします。
「致方無之」、「無之」をたよりにさかのぼって「致方」(いたしかた)と読めたが、「致」だけだとわからなかったはずです。この三行目後の「致」はすぐわかるのですが。
「十五日」、「五」の一画目がない。それでもこの字はわかりやすいほう。
「いま多゛」(いまだ)、「多」(た)変体仮名。
「両人」(りょうにん)二人。「両」「当」「留」などくずし字がにてます。「帰」の旁も似てる。
「定目而」(さだめて)、3文字セット。
「弐人」(ふたり)、「弐」がわかりずらいが一から十までマスターしなければならないくずし字です。この二行後にも出てくる。
「欠込」(かけこむ)、「駆け込む」は今でも使われます。
「欠落」(かけおち)は今で言う男女の「駆け落ち」の意味ではありません。農民が食っていけなくなって村から逃げること。武士では出奔(しゅっぽん)。欠落が出ると、村役人や親族は行方を探索しなければならなかった。
江戸時代の農民の生活が書かれている本は多数ありますが、
速水融氏「江戸農民の暮らしと人生 歴史人口学入門」が大変に興味深く読書できます。
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