2019年1月8日火曜日

変事出来二付心得覚記 その54




 P.17 5〜9行目まで。「飯能市立博物館所蔵平沼家文書」

(読み)
太次郎 殿 罷  出申  様 、各々  様 方
たじろうどのまかりでもうすさま、おのおのさまがた

本 と被仰  致  方 無之  、村 方 之者
ほんとおおされいたしかたこれなく、むらかたのもの

十  五日 帰宅 仕    候  得共 、いま多゛両  人 程
じゅうごにちきたくつかまつりそうらえども、いまだ りょうにんほど

不帰   、定 目而此 者 弐人 岩 鼻 表  江
かえらず、さだめてこのものふたりいわはなおもてへ

欠 込 候   哉、又 ハ欠 落 致  候   哉、
かけこみそうろうや、またはかけおちいたしそうろうや、


(大意)
(滝之助殿に先んじて)太次郎殿が申すには、皆様が
本当の気持ちをおっしゃられて(お互いの立場上)どうしようもございません。村民は
15日に帰宅致しましたが、いまだに二人程が
戻っておりません。きっとこの二人は岩鼻代官所へ
駆け込み訴えているのでしょうか、または逃走してしまっているのでしょうか。

(補足)
「申様、各々様方」、「様」の偏と旁がはなれて、今までの筆跡となんか異なっている感じがします。

「致方無之」、「無之」をたよりにさかのぼって「致方」(いたしかた)と読めたが、「致」だけだとわからなかったはずです。この三行目後の「致」はすぐわかるのですが。

「十五日」、「五」の一画目がない。それでもこの字はわかりやすいほう。
「いま多゛」(いまだ)、「多」(た)変体仮名。

「両人」(りょうにん)二人。「両」「当」「留」などくずし字がにてます。「帰」の旁も似てる。

「定目而」(さだめて)、3文字セット。
「弐人」(ふたり)、「弐」がわかりずらいが一から十までマスターしなければならないくずし字です。この二行後にも出てくる。

「欠込」(かけこむ)、「駆け込む」は今でも使われます。
「欠落」(かけおち)は今で言う男女の「駆け落ち」の意味ではありません。農民が食っていけなくなって村から逃げること。武士では出奔(しゅっぽん)。欠落が出ると、村役人や親族は行方を探索しなければならなかった。

 江戸時代の農民の生活が書かれている本は多数ありますが、
速水融氏「江戸農民の暮らしと人生 歴史人口学入門」が大変に興味深く読書できます。




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