2018年9月29日土曜日

紙漉重宝記 その50




P.20 7行目〜最後まで


(読み)
狗 可ミ者異 やう能ものなり。此 湯尓かきら須゛、鉄 銑 製 の
いぬかみはことやうのものなり。これゆにかきらず 、てつづくせいの

多ヽらに付 事 あり。左阿る時 者、其 湯口 より湯一 滴 も出ざ流なり。
たたらにつくことあり。さあるときは、そのゆくちよりゆいってきもでざるなり。

奇怪  の事 奈れども心  得の多めこれを記 し置 なり。
きくわいのことなれどもこゝろえのためこれを志るしをくなり。


(大意)
犬神は異様なものである。紙漉きのときに用いる湯に限らず、銑鉄を
精錬するときにも犬神がつくことがある。そのようなときは、
湯口(精錬した鉄が流れ出てくる口部分)から鉄が一滴も流れ出てこない。
奇怪なことであるが、心得のためにこのことを記しておく。


(補足)
「異やう」(ことやう)、振り仮名どおり発音することは今ではなくて、異様(いよう)。
「多ゝら」、「多々良浜」という地名が日本各地にあります。浜で砂鉄がとれ、それを精錬して良質な鉄にしました。日本刀や刃物に使われます。精錬するには多量の木材が必要で、次々に森をなくしてしまったことはご存知のとおりです。
「多」のくずし字、下の部分でクルクルと2回転します。「両」のくずし字と似ています。
「阿」、読みにくい。「阝」がわかりにくいし、「可」だって普段見るくずし字とは違っています。
「奇怪」(きくわい)、「きかい」。
「心得」、また出てきました、3度目。



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