P.15 同賣買能事の下半分
(読み)
さまれゝ
さまれさまれ
こん奈やと
こんなやと
上 方 の
可ミ可゛多の
馬 ハ四 十 〆
むまはよんじっかん
可ら付 る
からつける
げ奈
がな
ど可奈
どかな
事 しや
ことしや
(大意)
さぁ、さぁ、これくらいの荷物ならば
上方の馬ならば40貫はのせられるだろうに、
どうしたんだよ。
(補足)
島根県浜田市「浜田市の方言」で調べると、
さまれ さまれ ⇒ 落ち着いてよく聞きなさい(K紙漉)
どがな、どがぁな ⇒ どんなであろう(重宝記)
とあります。
前々回の投稿で、馬が背負い運ぶ重量のことに触れました。
この会話文と馬の表情から想像すると、馬はこの3束でもヒーヒー言っているのかもしれません。
首を下げて苦しそうだし、目も釣り上がって「うー、苦しィー」って、うなっていそう。
馬を引いている人は、「これくらいの荷物でどうしたんだよ、さぁさぁ落ち着いて、上方の馬はもっと運ぶと云うぞ、どうしたこれくらいで」となだめ、元気づけているというところでしょうか。
「奈」、「な」の変体仮名。「馬」(むま)、昔はこのように発音したのですね。
この2つのくずし字「る」がほとんど同じです。さらに「事」のくずし字も「る」に似ている。
「〆」、「貫」のくずし字、何度もでてきています。
「紙漉重宝記」はだいたい120回弱を予定しています。この回でおよそ四分の一を終えたことになります。文章はともかく挿絵も素晴らしい。どれも塗り絵したくなってしまいます。
挿画は丹羽桃渓(1760-1822)、この重宝記だけでなく「鼓銅図録」という銅の採掘から精錬までの作業工程や道具類を色付きで写生しています。ふだんは大阪で家の家伝の薬を販売していました。
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