2018年9月3日月曜日

紙漉重宝記 その24




P.11 楮苧賣買之事の上半分


(読み)

楮 苧立 木を見天
可うそ多ちきをみ天

賣  買越春るハむ記
者゛いゝをするはむき

とりし楮 苧直段
とりし可うそ袮多゛ん

五貫 目尓て譬  バ銀
ごかんめにて多とへばぎん

十  匁  の價  なれバ銀
じゅうもんめのあ多いなればぎん

十  匁  二荒 木の可け目
じゅうもんめにあらきのかけめ

三 十 貫 目とるべし
さんじっかんめとるべし

これをむき取れバ
これをむきとれば

正  味五貫 目餘有
しょうミごかんめよあり

手間ハ真木を
てまはまきを

薪   尓し天徳 分
多きゝ゛にしてとくぶん

利口 に当 類也
里可うにあ多るなり

(大意)
楮苧の立木の状態を見て売買するときは、
楮苧の皮をむきとった束が5貫目で、たとえば銀10匁ならば
この値段にみあう楮苧の荒木(加工する前のそのままの木)の重さは30貫目と見積もりなさい。
この荒木をむきとれば正味5貫目余りあり、手間賃は、むきとった残りの木を薪にして与えればよい。
立木の売買はもうけがあり賢い方法である。


(補足)
 キセルをくわえシブチン顔で算盤をはじいているのは、楮苧の原料を販売している問屋さんでしょう。脇には煙草盆と天秤棒があります。その後ろの風呂敷包みは?

 楮苧皮買い入れ業者が楮苧農家の青田買いも、もうけがでて賢い方法であるとの説明でしょうか?
むき取り手間賃の支払いを残りの木を薪の現物で与えればよいので、その分がうくという理解でよいかどうかちょっと悩みます。

「越」、「を」です。結構出てきます。くずし字はどうにかわかりやすい。
「直」はそのままでも、部品としても頻出。特徴的なくずし字。今では「値段」ですが「亻」がなかったんですね。
「譬」(たとえば)、くずし字は「言」が「云」になってます。
「有」、確実の読むことができる部類のくずし字に入れるべき字。
「間」、これは最頻出です。「門」が冠(かんむり)になっているのです。そして、門構えの中が冠の下部にきます。くずし字では、偏と旁の関係が、冠とその下部になっているような例が多いです。言い換えると部品の左右関係が上下関係になってます。

 くずし字はひとつの漢字にひとつのくずし字が対応している訳ではないので、古文書辞典で調べたときは、必ずほかの用例のくずし字の形を手でなぞります。意味は大抵わかっているので
何度もなぞって記憶にとどめます。

 外国語を学ぶとき、その単語にあてはまる訳語を探すだけでは正確に文章を理解できません。
その単語を調べたら、必ずほかの意味も読みます。こちらのほうが重要です。その単語の意味の全体像をつかみとるためです。

 くずし字は日本語ですが、同じようなものだと考えています。
くずれ方、くずし方の加減を印象づけるために何度もなぞる、コツコツわたしはやってます。



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